今年も米国・ラスベガスで、テクノロジー関連のカンファレンス「CES 2019」が開催されました。曲がるディスプレイや、4K8K映像、いよいよ現実が近づいている「5G」など、注目のトピックが色々とあった今回。その模様をレポートしながら、BAE編集部の視点から見えてきた傾向を紹介します。
スマートミラー、スリープテック、IoTは次のステージに
IoTが生活を豊かにする未来像
まずは、各社で語られていた未来の暮らしがどのようなものか、一例を見てみましょう。
家でも外でも、IoT化やAIの実装による、より便利な未来はもう目の前まで来ているようです。
自動車サプライヤーのボッシュでは、IoTをテーマにヒップでユーモアあふれる未来の姿が提案されていました。例えば、自動で食品をチェックして、最適な保存方法を表示。料理する時は、キッチン台にプロジェクターから投影された画面をタッチスクリーンのように操作できます。これなら調理中でも使用しやすいですね。
また自分のクローゼットや棚など好きな場所にパーソナルアシスタントを置いて、扉や壁面をタッチスクリーンに変えるモジュールも紹介されていました。スケジュールや天気予報などの情報を提供するだけでなく、ワードローブの提案もしてくれます。さらにオンラインで新しい服の購入やランドリーサービスの予約までも。
ほかにもセンサーで、室内の温度を把握して管理したり、音声で制御を行ったり。家庭用の芝刈り機にも、AIが組み込まれていました。
これらの包括的イメージを具現化しているのが、スマートホームエリア。各ブースをのぞいてみると、各家電が連携するイメージ画像を掲示しているところが多数。併せて印象に残ったのが、セキュリティ。スマートキーのほか、顔認証で家族かどうかをチェックする、とういうものもありました。
次に、より身近な実用的家電の傾向をご紹介します。
ホームクリーニング機
「スーツを着る人の家に1台あると便利そう!」と思ったのが、ホームクリーニング機「LG styler」。スチームで臭いや花粉をケア、しわものばしてくれます。サムスンからも発表されており、今後は洗濯機、乾燥機に加え、ホームクリーニング機も一般的な家電になっていくのかもしれません。
進化するスマートミラー
スマートミラーは、昨年のCESでも盛り上がっていましたが、今年は目新しいものというよりも、より精度が上がり、スマートホームに欠かせない標準アイテムのひとつとなりつつあるようです。
P&Gのブースでは歯ブラシが端末となり、全身の状態をチェックできる大型のスマートミラーを展示。天気などの情報をチェックするだけでなく、健康管理もスマートミラーにおまかせです。
様々なモニタリングが登場したベビーテック
昨年に引き続き、多くのママ&ベビーのモニタリングアイテムが展示されていたベビーテックエリア。常に目が離せない赤ちゃんのモニタリングのためのアイテムは、安全性も高まり、肌に直接つけるものが多くなりました。
例えば「Nanit Breathing Wear」では、布のパターンを認識し、その動きから赤ちゃんの状態をチェック。直接肌に触れるものではないので、肌が弱い赤ちゃんにも使えそうです。モノトーンというスタイリッシュさも目を引きました。
すべての利用者が心拍数などまで測定する必要がないとするならば、こういった見た目と機能性を兼ね備えた商品も今後開発が増えるかもしれません。
もうひとつ、注目された点は、商品の幅の広さです。日本では「いまいち」という声もある搾乳器も、CESで見かけるものはブラジャーの中に収納可能。帰国後、写真を育児経験者に見せたところ「コンパクトで使いやすそう」という意見が多数。ミルク時間や量の記録を楽にする「スマート哺乳瓶」もありました。
ただ、日本は子供の数が少ないので、積極的に進出を予定している海外企業はまだあまり多くないのが現状です。国内でのベビーテック市場を盛り上げるには、日本独自での開発も必要になりそうです。
病院での検査が家庭に? ヘルステック
ヘルステック分野は、ここ数年のCESでも極めて大きな注目を集めてきたテーマです。病院など専門施設をターゲットにしたソリューションの提案や、家にいながら診察が受けられるようなシステム。もっとライトな家庭用のものまで、その幅はかなり広いもの。大企業から小さなベンチャー企業まで、多種多様の出展がありました。
ベビーテックとヘルステックの中間のようなアイテムとして、通常は病院で行うエコー検査を自宅で行えるという、変わったアイテムも展示されていました。こちらは妊婦向けとのことで「いつでも胎児を見たい」というママには歓迎されそうです。
類似のアイテムとして、本格的なエコー検査を実施しているブースも。検査を行う人の手には、スマホが握られていました。ポケットに収まるエコー、というのがコンセプトのようです。
今後、病院で行う検査の一部も、もしかしたら家庭用血圧計のように個人宅でできるものに変わっていくのかもしれません。
スリープテックは日本の企業の参入も
注目カテゴリのひとつ、スリープテックのエリアでは、睡眠の状態を検知してより眠りの質を高めたり、形状や温度が変化するなど、快眠のための様々な機能が付いたグッズが多く展示されていました。頭部へのデバイスが多い中、東京西川がスマートアパレルXenomaと開発しているスリープテックは、足につけるアイテムで注目を集めていました。
こちらは足首にバンドをつけて、皮膚表面温度を感知させるというもの。感知した温度に合わせて、マットレス側が最適な温度に制御してくれるとのこと。寝ている間に布団を蹴飛ばして風邪をひく……といったことがなくなりそうなアイテムです。現在開発中とのことで、商品化が楽しみな一品でした。
実現間近の5Gや近年話題の自動運転は?
昨年もスマートホーム、スマートタウンのイメージが多く発表されましたが、今年はより私たちの生活に密着したサービスやプロダクトが発表されていました。
5Gの本格導入を感じられたCES会場
2019年9月からNTTドコモがプレサービスを開始すると発表している5Gについては、実現間近ということもあり、体感系のデモや実機の展示が行われていました。クアルコムブースでは、5Gの電波を受信している端末も。
実現化する自動車運転技術
5Gが実現すれば、より現実味を増すと考えられているのが自動運転です。昨年トヨタが発表した「e-Palette Concept」の影響か、箱型をしたMaaSを視野に入れたと思われる乗り物が各所で見られました。昨年注目されていた「音声認識」もはや定番機能となり実装化。その他、自動運転に欠かせないカメラ部分を掃除する機能なども登場。
自動運転の実現に向けて、地に足のついた技術の開発がされているようです。
形を自由に変えることができるディスプレイ
もうひとつ、今盛り上がっている分野が4Kや8Kのディスプレイ。日本でも、昨年12月から4K8K放送が開始されています。その中でも多くの来場者の足を止めていたのが、LGのロールアップする4Kテレビです。
今年はテレビのほか、ディスプレイが変形するスマホなど、「曲がるディスプレイ」に大きな注目が集まっていました。タイル状にしたり、曲面にしたりと、曲がるだけでなく自由な配置ができるようになっており、ディスプレイの進化に驚きます。
アクティビティもテクノロジーで進化
外出やドライブが更に楽しくなりそうな提案も。Boseでは12月にアメリカで発売された「Bose Frames」を使った、ウェアラブルな旅行案内のデモを実施。
こちらのデモでは、このセットを身に着けてラスベガスを走行。観光ポイントにくると、メガネのフレームに内蔵されたスピーカーから「右を向いてください」とスポット名の案内が流れます。さらに詳しい説明が欲しい時は、音声案内に従い、首を縦に振るだけ。自動で詳細情報が流れるという仕組みです。人手不足に悩む観光地などでは使えそうだと感じました。当然Boseの製品なので、音楽も高音質で楽しめます。
またValeoは、家にいながら家族の運転するクルマに乗ってドライブに出かけるというXR技術「Valeo Voyage XR」をプレスカンファレンスで紹介。家にいる側だけでなく、運転している側も、まるで後部座席に人がいるかのような感覚でドライブしています。
これが実現されれば、ドライブ旅行の楽しみ方も変わってくるかもしれませんね。
昨年より、日本人の来場が多くなった印象を受け、国内からの注目度の高さを感じました。
全体的には、昨年まで比較的注目度の高かった「音声認識」や「顔認識」技術は、もう世の中に浸透してきたという印象で、今後これらの技術は、より日常のデバイスに「標準装備」として溶け込んでいくのでしょう。
高速インフラである5Gも実装段階に入り、各社は具体的なサービス提案へ向かっています。
また、コネクテッドホームや、まだ夢物語のようなビジョンが多い自動運転、それを利用したMaaSなどについては、昨年に比べて実現に向けた一歩を感じさせる展示に。コンセプトから実現に向けて進みつつあります。
技術の進化を感じた2019年のCES。
これまで数年かけて様々な産業全体で描いてきた未来像が、実装に向けて現実味を帯びてきていると感じました。
来年はどんな未来を見せてくれるのか、今から楽しみです。
- Written by:
- BAE編集部