2018.10.05

場の有効活用を実現する「IoT透明ディスプレイ」の可能性

ディスプレイのIoT化が切り開く、未来のカタチ

街デジタルサイネージの浸透により、柱部分などの場所が、広告枠として利用されるようになりました。最近では、IoT化した透明のディスプレイが登場し、店舗のガラス部分も、さまざまなコンテンツの表示が可能となり、“これまで活用されていなかった場を、有効活用できるソリューション”が広がりを見せています。

BOEは、液晶パネルの出荷台数において、世界一を誇るグローバル企業です。日本のすべての顧客の総合窓口であるBOEジャパン株式会社 代表取締役社長 久保島 力さんに「IoT透明ディスプレイの活用法、その可能性」などについて、お話を聞きました。

目次

さまざまなモノを進化させる「透明ディスプレイ」

久保島 力さん
BOEジャパン株式会社 代表取締役社長 久保島 力さん

――液晶パネルやデバイスの生産・販売・開発において、世界有数のグローバル企業である「BOE」。最近では8Kハイビジョン関連のソリューションに注力すると同時に、「IoT透明ディスプレイ」を発表し、新たな領域にも参入しました。その背景について教えてください。

弊社は液晶パネルを中心としたさまざまな事業を展開しています。そのひとつにスマートシステム事業があり、「IoT透明ディスプレイ」は同事業の新製品として開発したものです。

これまでディスプレイといえば、背景は黒が一般的でした。透明のものは珍しいことに加え、IoTと結びつけることで、これまでデッドスペースとなっていたガラス部分が活用できますから、「サービスまで変革できる可能性」がそこにあると考えました。

店舗のウィンドウも現在はデッドスペースになっているが、IoT透明ディスプレイ化することで、さまざまな表現が可能になる

――IoT透明ディスプレイには、どんな可能性が秘められているのでしょうか?

IoT時代に突入し、これから私たちの生活はさらに便利なものへと変わっていくでしょう。そのなかで重要なのが、「簡単で、面白いこと」です。スマートスピーカーのヒットは、まさにそこにマッチしたものだと思います。

IoT透明ディスプレイも同様に「簡単で、面白い」という特徴を有しています。たとえるなら、同製品は“透明の巨大タブレット”と表現できます。

IoTインタラクティブ透明ディスプレイシステムを利用した「次世代 冷蔵庫」のサンプル。BOE社製のIoT透明ディスプレイは、業界トップの透過率を誇る

IoT透明ディスプレイは、タブレットと同じ機能を有していますから、インターネット検索はもちろん、テキストを表示したり、動画を流したりすることもできます。またディスプレイに触れれば、タッチパネルのように操作できるだけでなく、「パネルをタッチしたアクションに対して反応する」といった、インタラクティブな表現も可能です。

テクノロジーと組み合わせ、次世代のコミュニケーションを実現

――では、“プロモーション”という視点で考えたとき、そこにはどのような可能性があるでしょうか?

例えば、業務用冷蔵庫も“次世代型”に進化させることを考えています。

コンビニには、必ず飲料コーナーがありますよね。そこに設置されている冷蔵庫のドアをIoT透明ディスプレイにすれば、アイキャッチや広告枠として、活用することが可能です。

まずアイキャッチとしての活用法としては、ディスプレイに「いらっしゃいませ」と表示するだけでも、十分に興味喚起できるでしょうし、さらにおすすめの飲料などを表示すれば、特定の商品を訴求することも可能です。

透明のディスプレイには、自由にテキストや動画などを流すことができる。たとえばインバウンドを意識し、外国人観光客向けに、多言語でテキストを表示することも可能

さらにカメラや人感センサーを組み合わせることで、来店者の動線、性別や年齢などをAIが分析し、最適な商品をレコメンドすることもできます。他にも、来店者に合わせた広告を表示するなど、デジタルサイネージとしての活用も可能です。

カメラやセンサーを組み合わせれば、店舗のガラス部分をデジタルサイネージのように利用でき、来店者に応じた広告の表示も可能

これはつまり、これまで活用されていなかった場(店舗のガラス部分や、冷蔵庫のドアなど)を、有効活用することを実現するソリューションなんです。弊社としては、IoT透明ディスプレイが、店舗の空間をデザインする上で重要な役割を果たす未来を描いています。

――AIによる画像解析以外にも、テクノロジーと組み合わせることで、さまざまなことが実現できそうですね。

はい。現在タブレットでできることはIoT透明ディスプレイでも可能ですから、技術的には、音声認識による双方向のコミュニケーションもできます。具体的には、ディスプレイに向かって「人気の飲料は?」と質問すると回答が得られる、などですね。

他にも顔認証技術と組み合わせ、個人を特定できれば、来店ポイントの付与も可能でしょう。また個人の特定までせずとも、ディスプレイに近づいたことを判別し、来店ポイントが取得できるQRコードを表示する、といった施策も可能です。

透明部分をIoT化し、さまざまな場で新たな価値が生まれる

――目的によって、販売促進や空間演出など、さまざまな活用法がありそうですね。ちなみに、他にも、ビジネスユースで想定している活用法はありますか?

はい。IoTのメリットを利用した「タグを付けて管理する」という発想の水平展開として、病院での活用を想定しています。病院では血液を保管するボックス(血液保冷庫)がありますが、現在はラベルによる管理を行っています。

そのボックスの扉をIoT透明ディスプレイに変更することで、より安全かつ効率的に血液を管理できると考えています。これはIoT全般に言えることですが、テクノロジーによって「モノの管理がしやすくなる」ので、重要度の高いものほど、IoT化を進めることで利便性は高まる傾向にあります。

他にも、一般家庭の冷蔵庫のドアを同製品に置き換えてIoT化することで、ディスプレイをタブレット代わりに使って料理のレシピを検索したり、料理をしながら調味料を購入(ネット通販)したり、他にも賞味期限や食品の管理などができる、利便性に優れた「次世代 冷蔵庫」として、冷蔵庫は進化を遂げることが可能です。

現状、食品の管理は、食品にタグ付けをするなど、何かしらの処理が必要ですが、既存または新たなテクノロジーによって、商品を自動で読み込み、賞味期限が近くなると通知してくれる、といったことは十分に実現できる可能性があると考えています。

――すでにトライアル的に導入している小売店もあるそうですが、その反響はいかがですか?

反応は良好です。初めて見たお客様は「驚き、そして感動」しているそうですから、店舗におけるアイキャッチとしての役割は十分に果たせていると感じています。しかし現状は、導入している企業や店舗も「どう使うか?」を模索している段階であり、入れ替えるためのコストなどを考慮すると、普及までの道のりは決して平坦ではないかもしれません。

まずは大型店、百貨店などのショーウィンドウからIoT化し、透明ディスプレイを利用することで、実物の商品の周囲に、詳細の説明を映し出すなど、“商品の見せ方(空間演出)”が近い将来に進化すると考えています。

ちなみに、すでに「透明ディスプレイ」が導入されている場所としては、水族館があります。水族館のガラスを透明ディスプレイにし、リアルと映像をコラボレーションさせることで、双方向の新しい表現を実現しています。

時間はかかるかもしれませんが、ゆるやかに少しずつ、「窓などのガラス部分、透明の場所」に新たな価値が生まれる時代が訪れると、弊社は信じています。

これまで活用されたなかった場の有効活用を実現する「IoT透明ディスプレイ」。写真を撮って読み込む、テキストを表示するなど、タブレットでできることはすべてできるため、使う場所や目的に合わせて、さまざまな利用法があります。ショーウィンドウを使ったOOHやインストアプロモーション、アイキャッチなど、アイデア次第で、場に新たな価値を生み出せる可能性がそこにはありそうです。

IoT透明ディスプレイの概要と活用法
Written by:
BAE編集部