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スマホ世代に響くコンテンツとして再び注目が集まる「GIF動画」。実際に広告コンテンツとして活用する際のポイントについて、日本最大級のGIF動画プラットフォーム「GIFMAGAZINE」を運営する同社のCEO、大野謙介さんに解説いただきました。
1.「GIF」はもう「ファイルフォーマット」ではない?
「GIF」と聞くと何を思い浮かべますか?おそらく大半の方は「バナー広告」や「webサイトを賑やかすガチャガチャした画像」というイメージを抱くかも しれません。その「GIF」のイメージはすでに古いものとなり、いまでは短編ループする、スマホでサクッと楽しい、ポップカルチャー、映像体験としての「GIF」が、多くのクリエイターや視聴者に受け入れられています。
GIFMAGAZINEは日本最大級のGIFプラットフォームで、コンテンツの総再生回数は月間1.6億回を誇ります。月間120万人を超える来訪ユーザーは30代までが7割以上を占め、ほとんどがスマートフォンで閲覧しています。
GIFMAGAZINEの月間アクティブユーザーは順調に増加している傾向にあり、毎月数十万件のコンテンツが投稿・掲載され、GIFを気軽に閲覧できるプラットフォームとして成長しています。GIF作家を「GIFer」と呼び、その創作活動を支援する個展やコンテストも開催しています。
このようにGIFの市場規模は広がりを見せていますが、「GIF」が再注目された要因としては大きく3つあります。
1つ目は、「スマートフォンの普及」「フラッシュ非対応」「コンテンツのマイクロ化」などの「デバイス要因」。2つ目は「SNS」や「チャットツール」など短尺コンテンツが流通しやすいツールの登場による「メディア要因」。3つ目は先の2つの要因を受けて、作家全体でもSNSやチャットで受けるコンテンツを作ろうという傾向が生まれ始めたことによる「コンテンツ要因」。
この3つの要因が、「GIF」がインターネットのポップカルチャーの1つとして注目を集めている理由と言えます。
2.見てもらえる目的別、効果的なGIF動画とは?
GIF動画の利用5大カテゴリ
広告コンテンツとしてのGIF動画では、利用目的別に大きく5つのカテゴリに分けられました。
I.ブランディング型GIF
ブランディングを目的としたGIF。クリエイターの独自性、作家性を活用し、ブランドやサービスの特性を伝えることができる。
II.参加型GIF
エンゲージを目的としたGIF。クイズ、アハ体験、占い、ルーレットなど、ゲーム性を持たせることで回答・行動を自然に促したり、SNS上で「いいね」を得やすくなる。
III.スタンプ型GIF
エンゲージを目的としたGIF。LINEスタンプのような一言系のGIFアニメで、SNSでの反応や感情表現に利用することができる。
IV.手順説明型GIF
商品やサービスの理解促進を目的としたGIF。登録、サービス利用手順などをアニメーションにしたもの。難解な操作手順をコンパクトにまとめ、視聴者の理解を促すことができる。
V.既存バナーのGIF化
ブランド、サービス認知向上を目的としたGIF。告知用バナーの注目させたいポイントを動かすことで、強調したいシンプルなメッセージを伝えることができる。
GIFの表現手法
GIFは表現手法にも様々なものがあります。代表的な例を4つ示します。 前述の「目的」に応じた手法を組み合わせることで、視聴者により効果的に伝えたいメッセージを届けることができます。
①シネマグラフ
シネマグラフ(Cinemagraph)は“動く写真”のような芸術表現です。動と静が共存する幻想的かつ芸術的な作品に仕上がります。ラグジュアリーな表現や食品のシズル感を表現したい場合に効果的です。2011年ニューヨークのJamie Beck と Kevin Burgらによって公開された表現手法。
②ストップモーション
折り紙や粘土などを用いたコマ撮りアニメーションです。イメージカラー等を用いることで統一感のあるアニメーションが制作できます。
③GIF漫画
ストーリーやキャラクターを伝える場合に最適なフォーマットです。紙では表現できない動く漫画をスマートフォン上で展開することが可能です。
④間違い探し、クイズ
ロゴや写真をベースに素材の一部がゆっくりと変化するGIFアニメーションです。数秒の間に広告したいポイントを変化させることにより、告知内容をよりシャープに伝達し、ユーザーとのコミュニケーションを促進します。
「GIF」で厳守すべき3原則
より「伝わる」「気になる」GIFを制作する為に、守るべき3つの原則があります。事例を基に、それぞれの原則について解説します。
①5秒以内
スマートフォンでサクッと見て楽しい尺、5秒以内に込めるべし!
②ワンメッセージ
ネタを欲張りすぎない、込めるのはシンプルなワンメッセージのみ!
③ループ
GIFならではのループする面白さ、中毒性を生かした構成にする。
1度目で気になる、2度目でじっくり見る、3度目で理解を深める!
●実際にその原則を守って制作したGIFをご紹介します。
・クライアント:ピジョン株式会社
・目的:シティコンパクト・ベビーカー「PATTAN」のブランディング
・ターゲット:赤ちゃんのいるお母さん
・GIF内容:「片手で畳める、持ち運べる」という商品の特徴と、利用シーンをシンプルに表現したGIF
・クライアント:川崎フロンターレ
・目的: チームのブランディング
・ターゲット:サポーター、スタジアムに来場していない未開拓層
・GIF内容:チーム創立20周年にあたる2016年のエイプリルフールネタとして、川崎フロンターレの面白さ、楽しさを表現。「動く浮世絵シリーズ」で話題の作家、瀬川三十七が『川崎フロンターレは、実は創立200周年だった』という浮世絵GIFを制作。大久保選手や中村選手を描くなどファンが喜ぶディテールを詰め込んだ。
・指標:リーチ数、コメント等の反応内容(好意的か、魅了的なチームと感じてもらえたか)
この施策は結果的に430万人へのリーチを獲得し、TwitterでのRT数も4300を越えるなど、視聴者から大きな反響を生み出しました。
ここまでご紹介したポイントをまとめると、目的に合わせたカテゴリと手法を選択し、3つの原則を満たす事で、視聴者にとってより「気になる」「伝わる」GIFを制作することが可能です。
3.GIFクリエーティブにおけるPDCAの考え方
GIFを取り入れる際の検討フローは、その他の広告コンテンツ制作と同様です。但し、3~5秒という短時間の中で確実に伝えるために、ターゲットに向けた「ワンメッセージ」の設計が非常に重要であると共に、よりシンプルでシャープなクリエーティブを制作することが求められます。
検討フロー
①ターゲットを明確にする
誰にメッセージを
届けるのか?
→
②ワンメッセージの設計
最も伝えるべきメッセージは
何か?
→
③流通経路の設計
流通媒体は何か?
どういう経路でターゲットに
届くのか?
→
④GIFカテゴリと手法の選択
どんなクリエーティブを制作
するのか?
施策効果の寄与範囲の再確認
GIF施策は、顧客の購買決定プロセス「AISAS」において「認知」「関心」に大きく寄与します。 寄与範囲を明確にした上で、対象範囲におけるKPI(リーチ数、再生数、ブランドリフトなど)に対する各クリエーティブの実績ギャップを、①誰に、②どんなワンメッセージを、③どんな媒体で、④どんなクリエーティブ で、という4側面から分析し、PDCAの改善行動を実施していくことが重要です。
ファイルフォーマットの次元を超えて、体験として楽しまれている「GIF」。スマートフォンだけでなく、デジタルサイネージなど、人の情報摂取に対して鋭いワンメッセージを届けることができるコンテンツだからこそ、消費者とのコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしていくでしょう。
大野謙介
株式会社GIFMAGAZINE代表取締役社長/CEO
福島県郡山市出身/横浜国立大学
2013年 GIFMAGAZINE創業。様々な媒体でGIF制作の解説記事を執筆すると共に、メーカーやアパレルなどのGIFプロモーションを実施、GIFMAGAZINE公式GIFer(ジファー)や自社制作チーム「GIFMAGAZINE Studio」でGIFの制作、ディレクションも担当。おそらくここ5年で最もGIFを見た日本人。
著書:GIFアニメの作り方-Webデザイン基礎トレーニング(出版 MdN)
- Written by:
- BAE編集部