2018.03.28

定着の兆しを見せる「情報のパーソナライズ化」

AIは“最適化された情報だけが届く未来”を実現するか?

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  • 人それぞれ「感性」は異なるものです。しかしAI(人工知能)を活用すれば、大量のデータから規則性や関連性を見つけ出し、個人の「感性(趣味嗜好)」を推測することができます。

    その強みを“ファッションセンス”という言語化しづらい分野などに応用しているのが、SENSY株式会社です。代表取締役CEO・渡辺祐樹さんに「同社のAI活用事例、そしてAIの未来」について聞きました。

    目次

    情報をパーソナライズすることで生まれるメリット

    SENSY株式会社 代表取締役CEO 渡辺祐樹さん

    ――御社が提供する「SENSY」は、ディープラーニングによって、ユーザーひとりひとりの“感性”を学習するパーソナル人工知能です。現在、どのように活用されているのでしょうか?

    BtoCの分野ですと、「SENSY CLOSET」というデジタル・クローゼットのアプリがあります。これは自分の持っている洋服をアプリ上で管理することで、スマホひとつで翌日のコーディネートを決めたり、いま自分が持っている服をいつでも確認可能にするものです。

    自宅の衣類を撮影し、アプリ上で一元管理できるデジタル・クローゼットアプリ「SENSY CLOSET」

    もちろんそれだけではありません。最初のステップとして、自分の洋服を写真に撮り、アプリに登録することで、AIはユーザーの好みを学習します。それにより、連携しているブランドから、ユーザーにおすすめの洋服をアプリ上でレコメンドします。

    リターゲティング広告とは違い、訪問したサイトのアイテムが再表示されるのではなく、あくまでユーザーの持っている衣類から“気に入りそうなアイテム”がレコメンドされるため、ユーザーにとっても有益な情報である場合が多く、広告と意識せずに自然と受け入れられる傾向にあります。

    つまり、AIを上手に活用することで、理想的な情報のマッチングを実現することができるのです。

    ――御社のパーソナル人工知能を利用した「SENSY BOT」も、現在さまざまな企業で活用されています。「SENSY BOT」では、どのような形でAIの特性が活かされているのでしょうか?

    「SENSY BOT」は、ユーザーの嗜好性や話し方を学び、日々成長していくプラットフォームです。チャットを通じ、例えば「食べたいメニューと場所」を伝えれば、まるでコンシェルジュのように、おすすめのレストランなどを教えてくれます。

    同BOTは、昨年の「LINE BOT AWARDS」でパートナー賞も受賞し、現在はビジネス版がさまざまな企業で導入されています。企業で利用する場合には、顧客データと紐付けることで、“パーソナライズした情報”を届けられるのが特徴です。

    やはり企業がおすすめしたい情報とユーザーが知りたい情報にはズレがあります。その差が人工知能によって是正されることは、双方にとって大きなメリットがあります。企業からすれば、無駄がなくなりますし、ユーザーにとっては興味のある情報だけがレコメンドされるわけですから。

    情報を最適化すれば、効果も最大化される

    ――御社は他にもさまざまなサービスを提供していますが、特にファッション分野での活用例が多い印象です。

    そうですね。AIの強みはディープラーニングにより、言語化しづらい人間の好みを学習し、そこから規則性を見つけられることです。

    その特徴を最大限に生かせるのがファッション分野だと考えました。洋服はカラー展開だけでなく、サイズ展開もありますが、これまでは発注者の経験と勘に頼っている部分が大きく、発注・仕入れのコントロールは非常に難しいとされていました。

    そこで弊社は、ビジネス向けプロダクト「SENSY MD」を開発しました。人工知能を活用すれば、過去の店舗の売上や顧客データを分析することで、最適な発注数を導き出すことが可能です。これにより、ロスが減り、粗利益が18パーセント向上した例もあります。

    人工知能によるデータ解析は、これまで“何となく”決めていたものを、数値化し、さまざまな面で活用することを実現します。

    それはDMなどのプロモーションでも応用可能です。顧客データを活用し、パーソナライズしたDMおよびメールを送信することができます。

    「SENSY Marketing Brain」。AIを活用し、顧客のニーズに合わせた「おすすめアイテム」が表示されるDM例

    DMに記載する情報を最適化したことで、来店率が1.59倍になったという例もあります。つまり、情報を最適化すれば、効果も最大化するわけです。

    私たちは普段、生活の中でさまざまな広告に触れていますが、すべてに興味があるわけではありませんよね。その点、パーソナライズした情報は「誰に、どんな情報を送るか」をAIが精査した上で発信しますから、当然レスポンスも高まるわけです。

    今後は「分析力=競争力」の時代に

    ――今後AIはどのように活用されていくと考えていますか?

    弊社は将来的に「ひとり1台のAIを持つ時代」が来ると思っています。それがアプリなのか、ロボットなのかはわかりませんが、さまざまな場面で私たちの生活をサポートしてくれることは間違いありません。

    その日のスケジュールの確認から始まり、向かう場所にあるグルメスポットや見どころ、さらには趣味嗜好に合わせて、映画館や美術館、旅行先などを教えてくれるケースもあるでしょう。そのなかにはもちろん、アイテムのレコメンドなども含まれますが、パーソナライズ化されることで、ユーザー寄りの情報が表示されるようになると考えています。ですから、たとえそれが広告だとしても、ユーザーはそのことに気付かないほど、より適切なユーザーに、より適切な情報が届く時代が到来するのではないでしょうか。

    その頃には、個人のAIとさまざまなデータが結びついた巨大なプラットフォームが生まれているはずですから、情報に基づいた広告だけが表示されるようになることで、広告=ノイズと言われることも減少すると思います。また昨今、デジタル広告の費用対効果について疑問視する声もありますが、それもAIによって解決されると弊社は考えています。

    現在、AIでビッグデータを解析することが一種のトレンドのようになっています。しかし重要なのは、そのデータをどう使うかです。それが今後、企業の競争力の差につながると弊社は考えています。つまり、分析力が経営を左右する時代になっていくはずです。これから訪れる新しい時代において、弊社のパーソナル人工知能「SENSY」がトップランナーとなれるよう、今後まだまだ進化し続けていきたいと考えています。

    AIによるデータ分析が当たり前の時代に突入したことで、今後企業は、自社の顧客データをいかに活用していくかが重要になります。同時に、これからの企業プロモーションにおいても、「適切な情報を、適切なユーザーに届ける(情報のパーソナライズ化)」ことが求められていくでしょう。企業とユーザー、双方にとってメリットのある仕組み。それがこれからの“プロモーションのヒント”なのかもしれません。

    Written by:
    BAE編集部