東急東横線の中目黒駅から続く高架下の一角に、まるでヘアサロンやカフェを思わせるような「WASH&FOLD(ウォッシュ&フォールド)」という素敵な雰囲気のお店があります。この新しいスタイルの洗濯代行&コインランドリーが、私たちのライフスタイルを変えてしまうかもしれません。
2017年ヒット予測の上位にもランクインする「ソーシャルランドリー」。「ソーシャル」の名が示す通り、お店を訪れた人々にコミュニケーションを生み出すような工夫が凝らされた、コインランドリーの新しい形態。 ゆっくりくつろげる空間が用意されていたり、カフェが併設されていたりと、従来のコインランドリーのイメージを一新すべく、近年、都市部を中心に増え始めています。WASH&FOLD(以下W&F)もその1つで、洗濯代行サービスのほか、布団や、スニーカー、オシャレ着(中目黒高架下店のみ)など、さまざまな洗い物に対応する高機能洗濯機を備えたランドリーとしても利用できます。
今回は4月にオープンしたばかりの旗艦店である、中目黒高架下店にお邪魔しました。
お店に一歩足を踏み入れて感じるのは、清潔で洗練された明るい雰囲気。店舗によって内装のコンセプトは異なるとのことですが、W&F中目黒高架下店は高いスケルトン天井にコンクリートの外壁という都会的な造りで、さらにお店の奥まで抜けるような開放感のある空間が広がっています。
店内では持ち込んだ洗濯物を広げたり畳んだりするための大きなウッドテーブルのほか、ベンチには電源が備えられ、無料のWi-Fiやウォーターサーバー、雑誌コーナーなども利用できます。待ち時間も、カフェのように快適に過ごせる工夫がなされているのです。
また、同店舗内にはエコに配慮された海外製の洗剤をその場で量り売り購入できたり、シミ抜き剤を自分で試せるコーナーもあったり、まるで海外のエコショップを訪れたように楽しめます。
W&Fの広報を担当されている寺田さんによると「『洗濯=女性の仕事』という古い固定概念に捉われず、店内もユニセックスで落ち着いたトーンに統一しています」とのこと。
ソーシャルランドリーは洗濯サービス自体の利便性やクオリティの高さが大きな魅力となっていますが、注目すべきは店舗自体が地域の中でさまざまな世代をゆるやかに結びつけるコミュニティスペースとしての機能を果たしていることです。
「洗濯をするだけではなく、極端な話、ちょっとお茶をしに立ち寄った、そんなカジュアルな感覚で利用していただいてもいいと思っています。」(広報・寺田さん)
その言葉には、単なるランドリーを超えた「サード・プレイス」としてのソーシャルランドリーの可能性を感じさせます。実際、住宅街に立地する店舗では子どもが自由に出入りする光景も見かけるとのこと。
これは、店内が明るく清潔感もあることや、無人のコインランドリーと違って常時スタッフがいるからこそ、誰もが安心して過ごせるというのが大きく影響しているのだと思われます。
実際にW&Fでも、店舗自体を地域コミュニティの拠点とするための実験や、その可能性を探るための企画について模索しているといいます。
「例えば名古屋 星ヶ丘店では、店舗独自の企画として2階をコミュニティスペースとして開放し、ヨガの教室や手作りマーケットなどユニークな取り組みが行われています。また、今後はその他店舗でも、近所の人を中心として『アイロンがけ』『石けん作り』『シミ抜き』など生活周りをテーマとしたワークショップなどを開催していきたいですね」(広報・寺田さん)
誰もが毎日のように行う「洗濯」というキーワードを軸に交流できるソーシャルランドリーは、ライフスタイルの違いを超えて、長らく失われていた地域のコミュニティを新たに形成できる場所としての可能性を秘めているのではないでしょうか。
実際に店舗に訪れた利用者に、W&Fの利用目的などを聞いてみました。
「以前、たまたまお店の前を通りかかって、興味本位で入ったんです。珍しい洗剤があったので、ショップ感覚で楽しめました。その時、スニーカーも洗えることを知ったので、今日は2回目の来店。近くに行きたいカフェがあったので、コーヒーをテイクアウトして、ここで飲みながら洗濯してます。カフェも併設して、併用すると割引クーポンがもらえるとかのサービスがあったら嬉しいですね(30代男性)」
「会社が近いので、仕事終わりに洗剤を買いにきました。コインランドリーってどんよりした雰囲気で、特に女性にとっては怖いイメージがあると思うんですけど、ここは撮影スタジオみたいにオシャレで雰囲気もいいし…… 居心地いいですよね(20代・女性)」
「普段は自宅で洗濯していますが、洗いきれない量の洗濯物が出てしまった時などに利用しています。お店が綺麗で入りやすい印象ですね、子どもと一緒に来ることもあります(40代・男性)」
平日の昼間から夕方まで滞在してみましたが、幅広い年齢層が気軽に利用している印象を受けました。また、「週末にはビジネスマンや外国人ファミリー、観光客の姿も多くなります」と同店舗店長の秋好裕補さん。
店内の雑誌をパラパラと眺めたり、コーヒーを飲みながら待ったり。あるいは、待ち時間に周辺にある話題のお店に立ち寄ったり。若いカップルがテーブルで談笑している光景も印象的でした。海外のポップスが流れる店内は、ゆるやかな時間が流れていて居心地がよさそうです。
共働きが多い今、このようなコミニティスペースを上手く利用することで、少ない時間を楽しく有効に使うことが出来そうです。
さまざまな都市生活者がすれ違い、時には交流し、思い思いの時間を過ごせるソーシャルランドリーという空間は、私たちが見落としていた「ゆるやかな地域コミュニティ」という新たな価値を提供していると考えることもできます。皆さんもまずは一度、近くにある店舗に訪れて、その雰囲気を体感してみてはいかがでしょうか。
(店舗情報)
WASH&FOLD 中目黒高架下店
東京都目黒区上目黒2-45-14 高架下78
営業時間:8:00~23:00
TEL:03-6303-3811
定休日:無(年末年始をのぞく)