電通テック新入社員の岩田千夏子と若林花南です!
入社から約半年。BAEに携わる中で日々プロモーションや最新テクノロジーに触れ、刺激的な社会人生活を送っています。
今回は、10月20日(火)から10月23日(金)にかけて開催されたCEATEC 2020のレポートを私たちがお届けします。今年のスローガンは「CEATEC 2020 - Toward Society 5.0 with the New Normal(ニューノーマル社会と共に歩む CEATEC)」。356社/団体が参加し、DXや5G、非接触技術など、この時代ならではのテクノロジーやサービスが多く見られました。
新型コロナウイルスの感染防止のため全面オンラインでの開催となった今回のCEATEC。ブースの代わりに企業ごとのサイトが設置され、チャットで会話できる機能や、カンファレンス中に同時通訳が行われるなど、オンラインならではの新しい試みもみられました。
BAEでは「リテール」と「ライフスタイル」というテーマで、若者目線で興味深かった展示をレポートしていきます。
安心安全で快適な買い物体験をつくるソリューション
ニューノーマル時代、買い物のあり方は大きく変わりました。リアル店舗は一時休業を余儀なくされ、店舗再開後も感染対策の徹底が求められています。一方EC市場は大きく成長し、サイト上におけるUIやUXの向上はもちろん、セキュリティー強化も喫緊の課題となっています。
マスク姿でも顔認識が可能な「FaceMe®」(サイバーリンク株式会社)
まずご紹介するのは、人物認証、マスク着用のチェック、検温などを一括で実現できるAI顔認識エンジン。「FaceMe®」の強みは、認証角度の広さ。左右は60度、上下は50度まで認証するため、カメラを意識していなくても人物の把握ができます。認証スピードも約0.1~0.3秒と早く、立ち止まる必要はありません。現在リアル店舗では入り口で検温や消毒を行っているところが多いですが、検温がうまく認識されなかったり、消毒に時間がかかることで列ができ、結局そこが密状態になってしまうという本末転倒な事態が起こっています。今後、歩きながら検温ができるようになれば、混雑回避につながることでしょう。
顔認証技術は、リアル店舗のみならず、オンライン上でも効果を発揮します。銀行口座開設時の本人確認に必要なeKYC技術との連携が可能なため、遠隔での安全な買い物や登録も行えます。
また、AI人物検出技術を用いて人数カウントも可能だそうで、今後は、空間内での密の回避にも活用が期待されます。最近では顔認証のみで買い物が行えるレジなし店舗などもあり、この技術を導入すればマスクをしていてもスマートな買い物ができるようになります。また、感情分析技術などと組み合わせれば、さらにより良いオンラインコミュニケーションにつながるかもしれません。
映像が映し出せる「透明ディスプレイパーティション」(シャープ株式会社)
続いては、特に飲食店などで欠かせないアイテムとなっている、接触・飛沫を防止する「パーティション」。Withコロナ時代の今、店舗では徹底した感染症対策が必須となりました。ただ人を隔てるだけでなく、より便利で楽しくなるアイデアをプラスしたのがこの「透明ディスプレイパーティション」。これはCEATEC AWARD 2020ニューノーマルソリューションズ部門でグランプリを受賞するなど、今回のCEATECで注目の展示でした。
このパーティションの特徴は、透明ディスプレイを使用することで、パーティションに映像を表示できることです。また、従来の方式よりも透明性が非常に高いこと、ディスプレイが自ら発光しないため消費電力が大きく改善されたことも特徴として挙げられます。
これはありそうでなかったソリューションですね。パーティションに映像が表示されることによって、以下のように応用できそうです。
・情報を表示しコミュニケーションを促進
・デザインを表示し快適空間を演出
・遮光・採光により、プライバシー/開放感 を使い分け
タッチパネル機能を別途搭載することによってタッチ操作も可能になるそう。飲食店などで使われているオーダー用のタブレットがこれになる日もそう遠くないかもしれません。
人と人とを分けるニーズが高まり、物理的な距離に寂しさを感じることも少なくない今の時代。この新しい技術が、より安心で豊かな生活を送れるニューノーマル社会の実現に貢献することでしょう。
新しい生活様式のキーワードは「非接触」と「可視化」
普段の生活の中でも感染対策は根付きつつあります。外出時には当たり前のようにマスクを着用し、ソーシャルディスタンスで人との距離を保つようになりました。社会全体の衛生観念も高まっているように感じます。そこで二つ目のテーマとして、「ライフスタイル」をあげ、この分野への活用が期待される最新テクノロジーをご紹介します。
「手洗い認識HandVision」(株式会社Acculus)
感染対策において効果が高いとされる「手洗い」の重要性が高まっています。画像認識ソフトウェアの研究開発を行う会社が開発したこの技術は、カメラによる画像認識を用いて「正しい手洗い手順を行っているか」「洗い残しがないか」を自動判定し、ユーザに通知したり、統計データとして記録したりすることができます。いわば手洗いをデータとして可視化できるというものです。
特徴的なのは、手を洗うという両手の複雑な動きを3次元で復元して判定をしてくれること。きちんと洗っているつもりでも、目に見えない分、意外と菌が残っていることがあるかもしれません。まだ上手に手を洗えない子供たちにとっても、可視化することによってわかりやすく、また自動判定によってゲーム感覚で楽しく手洗いを習慣化することができそうです。
この技術は手洗い以外にも、工場の作業員など両手で複雑な動作(例えばネジ締め等)を行う手の動きを認識し、上手な人と下手な人との動作を分析して、業務改善に応用することができます。その他にも、職人の手さばきを復元・データ化することで伝統工芸品などの技能継承にも応用できるでしょう。
あとはVRと掛け合わせることによって、マニキュアを塗ったり指輪を付けることを仮想空間上で実現するなど、他の技術との組み合わせで可能性は無限に広がります。
毎日当たり前のように行う動作も、テクノロジーによって可視化され、そのデータが集積していくと新たな発見につながるかもしれません。
3Dデータが感覚的に動かせるSR開発キット(コーンズ テクノロジー株式会社)
オランダのDimenco社が開発したこのSR(Simulated Reality)開発キットは、HMDや3Dメガネといったデバイスを使うことなく、裸眼で3D映像を見ることができ、さらに、その3D映像に触れて動かすこともできるというものです。
この開発キットは8Kの自動立体視ディスプレイと、アイトラッキング、空中インタラクション用ハンドセンサー、3次元音響、指向性マイク、埋め込み信号処理という6つのコンポーネントから成り立っています。これらの最新テクノロジーの組み合わせによってより現実に近いシミュレーションを行うことができるのです。
その中でも、手のジェスチャーを認識するハンドセンサーの仕組みには、BAEでも以前ご紹介した、Leap Motion技術が使われており、ディスプレイに触れることなく3D映像を動かすことができます。
当初は立体データを扱うデザイナーのために開発されたものだそうですが、医療、教育、エンタメ分野など、この他にも様々な活用可能性がありそうです。例えば、オンラインでの会議や授業が増える中、立体映像と音響、手触りなどで五感をリアルに再現できれば、よりリアルに近いコミュニケーションが取れるようになります。言葉や平面のパワーポイント資料では伝わらないような事柄を伝えることができれば、今まで以上にスムーズで良質なコミュニケーションが期待できそうです。
「ニューノーマル社会と共に歩む CEATEC」というスローガンのもと、完全オンラインでの実施、新しい生活様式に向けた数多くの展示など、ニューノーマルをそのまま体現するCEATECとなりました。
この記事で取り上げたテクノロジー以外にも、私たちの生活をより豊かにするためのスマートハウスや、無人・自動化サービスなど、どの企業も独自の技術や強みを活かして未来へ進んでいこうという力強いメッセージが込められていたように思います。
今回、既存の製品を違う使い方で応用させている企業も多く見られました。新型コロナの影響で制限がある中でも、活用シーンの転換や、他のテクノロジーとの組み合わせなど、少し視点を変えるだけで可能性は無限に広がっていくのだと感じました。私たちもプロモーションに携わる立場として、今までの当たり前を見直しつつ、多角的な視点を持ち、ニューノーマル社会をより豊かにするヒントや情報をみなさんにお届けできるよう、これからも頑張ります!
岩田千夏子
株式会社電通テック 事業企画室 コミュニケーションデザイン部
大学時代所属していた体育会バスケ部では、プレーヤー兼アナリストとして活動し、スポーツのデータ分析に興味を持つ。
その経験を活かしつつ現在は「スポーツ×テクノロジー」について日々勉強中。
岡山県出身。趣味はライブ参戦とスノボ。
若林花南
株式会社電通テック 事業企画室 コミュニケーションデザイン部
大正前衛芸術の研究に励んでいた大学時代から一転、マーケティング/プロモーションの世界に飛び込んだ。 今興味があるのは、「プロモーションにおけるCX」。
東京都出身。趣味は美術館めぐりと登山と美味しい麻婆豆腐を探すこと。
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- 岩田千夏子 若林花南