“現代版・ケータイ小説”とも称される新しい表現手法「チャットストーリー(またはチャットフィクション)」。チャットのように会話形式で物語が進行する現代風の仕立てが受け、昨年、海外のティーンの間で流行し、日本でもチャットストーリーを楽しめるアプリが登場しました。そのひとつが昨年10月にローンチされた「pixiv chatstory(ピクシブ チャットストーリー)」です。
アプリ名にある“pixiv”と言えば、2007年にスタートし、現在、世界で3000万人以上のユーザーを抱える超巨大「イラストコミュニケーションサービス」として知られています。
両サービスを提供するピクシブ株式会社は、“クリエーターファースト”を掲げ、「チャットストーリーのサービスを提供することで創作のハードルを下げ、より多くの人にクリエートする喜びを伝えたい」と語ります。
そんな同社の執行役員・東根哲章さんに「チャットストーリーという、新しいコンテンツのカタチ、そしてその可能性」について聞きました。
時代に合った、新しいコンテンツのカタチ
――海外で流行し、日本にも広がりつつある「チャットストーリー」は、どんなところがユーザーに受けているのでしょうか?
「pixiv chatstory」がローンチされたのは昨年の10月のことです。「チャットストーリー」という分野は、これから定着していく“新しいコンテンツのカタチ”だと当社は考えています。
特に、タップしながら会話形式の物語を読み進めるというのは、非常に現代風ですよね。まるで誰かのLINEのやりとりをのぞき見しているような感覚で、ストーリーを追っていくことができます。
さらにどの物語も短く、数分で読み終えることができる点も、“今っぽいコンテンツ”のスタイルだと感じますし、日本独自の発展を遂げる可能性は十分にあると感じています。
――ネット時代の現在は、スマホさえあれば、多種多様なコンテンツに簡単に触れることができます。短時間で手軽に読めることは、その中で“選ばれる”ために重要な要素なのでしょうか?
はい。普通の小説は、読了までに時間を要しますし、読み始めてすぐに「面白いかどうか」の判断はしづらいものですよね。一方、YouTubeにアップされている動画などは、空いている時間にサクッと見られて面白いものが多くあります。しかし、すべての動画がユーザーの好みに合うわけではありません。それでも短時間で終わるため、若年層のユーザーはそれを気にしないんです。
これはつまり、若年層のユーザーには、「ちょっとした隙間時間(たとえば通学時間など)にコンテンツを消費したい」というニーズがあることを示しています。活字の分野でそのニーズを満たせるという意味では、チャットストーリーは時代にフィットしたコンテンツだと言えます。
ちなみに現在だと、他社も含め、チャットストーリーという分野全般で、ホラーの人気が高い傾向にあります。これはコンテンツの仕掛けとして、タップした次の瞬間に画像が飛び出したりと、エンタメ性の高いものが登場していることも影響しているのではないでしょうか。
この傾向は海外でも同様なのですが、チャットストーリーが日本で若者文化のひとつとして定着していくためには、今後ホラー以外のジャンルも広く親しまれていくことが必要になると考えています。
プロモーションに活用するなら「映画やゲーム」
――では、プロモーションとして「チャットストーリー」を活用できる可能性については、どのように感じていますか?
場に人が集まっている以上、活用できる可能性は十分あると思っています。実際、すでにいくつかの企業様からお問い合わせもいただいていますし、テレビ局の番組とコラボレーションするなど、新しい取り組みも始まっています。
個人的には、映画やゲームのプロモーションとは非常に相性がいいのではないかと考えています。作品のアナザーストーリーを「チャットストーリーとして配信」することで、本編の世界観を短い時間で感じてもらうことができますし、何より広告っぽさをなくして、ユーザーに訴求できるというのは魅力的だと思います。
チャットストーリーは、1分、2分で楽しめる活字コンテンツという新しいジャンルですから、活用法も“これから”という段階ではあります。当社では「お題」を選んで作品を投稿できる仕組みも用意しているんですが、たとえばプロモーションの一環として、映画(またはゲーム)のアナザーストーリーをユーザーが考えて投稿する、といったキャンペーンなども、今後生まれてくるかもしれません。また、気軽に投稿できるジャンル・仕組みなので、キャンペーンも盛り上がりやすいのではないでしょうか。
――今後の動向に大きな注目が集まる「チャットストーリー」ですが、御社としてはどんな展望を描いていますか?
チャットストーリーが若者文化として根付くためには、誰でも気軽に投稿できて、気軽に読める環境作りがまずは重要だと考えています。「お題」を設けているのも、投稿するハードルを少しでも下げるための施策のひとつです。
将来的には、LINEなどでの日常的なチャットのやりとりの中で、面白いものがあれば、それをそのまま投稿するくらい気軽に利用してもらえるようになってくれたらと考えています。
Instagramに写真を上げるのと同じテンションで、チャットストーリーに文章を投稿する。そんな風になってくれれば、チャットストーリーが若者の間で文化として定着し、より多くの人がもっと気軽にクリエートする喜びを感じることができると思うんです。そんな未来を目指し、“クリエーターファースト”のアプリとして、「pixiv chatstory」をさらに進化させていけたらと思っています。
今後、キャンペーンに活用されていく可能性も
現代版・ケータイ小説「チャットストーリー」は、タップして読む新しいタイプの活字コンテンツ。構造もシンプルで、誰でも気軽に創作を楽しむことができるプラットフォームとして現在、新しいユーザーを獲得しつつあります。
どうプロモーションとして活用するかは“まさに“これから”ですが、「お題」を設けてユーザーが投稿するという仕組みは、参加型キャンペーンなどにも今後、活用されていく可能性があるのではないでしょうか。
- Written by:
- BAE編集部