2018.06.06

最新のホログラム技術が生み出す「2.5次元」の活用法

3D空間×2D映像による“擬似ホログラム”とは?

「ホログラム」と聞くと、SF映画に登場する人物などの立体映像を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。事実、それがホログラムの最終形であり、目指すべきところだと考えられています。

では現在、ホログラムはどこまで進化を遂げているのでしょうか?

3DCG技術を組み合わせ、さまざまなホログラムサービスを提供している、株式会社ネクスメディアの取締役・池谷剛一さん、同 マネージャー・川田研二さんにお話を聞きました。

目次

ディスプレイの進化で鮮明化された疑似ホログラム

株式会社ネクスメディア 取締役 池谷剛一さん、同 マネージャー 川田研二さん
左から、株式会社ネクスメディア 執行役員 池谷剛一さん、同 マネージャー 川田研二さん

ホログラムは、何もない空間に表示した3次元の立体映像です。

「ホログラムは、ホログラフィーとも言いますが、これは写真(2次元)のフォトグラフィーから転じて、3次元の立体映像を指すものです。映画などでは未来的な表現の代表として、よく登場していますよね」(池谷さん)

現在は、まだ映画のようなホログラムではありませんが、ここ数年でホログラム関連の技術は進化していると言います。

「ひと昔前のホログラムといえば、たとえば『ビックリマンチョコ』に入っているシール。角度を変えると7色に光る絵柄が見える。あれもホログラムの一種です。それが近年、テレビのデジタル化を機に、ディスプレイの高解像度化が進んだことで、ホログラムを含む、デジタルコンテンツの画質が向上。再び注目を集める技術となりました」(川田さん)

ホログラムは反射した光によって、生まれる立体表現です。つまり、そもそも投影する素材の画質が粗ければ、陳腐なものになってしまうのです。

「また画質が向上すればするほど、立体感や質感の再度精度も向上します。その鮮明化された、立体的に“見える”映像が、ホログラムのように見せる技術を後押しする形になったんです」(池谷さん)

2.5次元の表現を可能にする「擬似ホログラム」

では、ホログラムの現在地とは、どのようなものなのでしょうか?

「AR/VRはデバイスを介して、立体映像を現実世界に表出させますが、ホログラムはデバイスなしで見られる点に違いがあります。準備不要の体験のしやすさは、ホログラムの大きな強みとも言えます。ただ現状はまだ、映画の世界には追いついてはおらず、“擬似ホログラム”が最先端のテクノロジーです」(川田さん)

「擬似ホログラムというのは、3D空間(現実世界)に、2Dの高画質CGを投影することで、限りなく3Dに近い“2.5次元の世界”を表現する技術です。これを弊社では『3DCGホログラム』と呼んでいます」(池谷さん)

百聞は一見にしかず。まずはこちらをご覧ください。

スマートフォン自体は本物ですが、実は画面には何も映っていません。画面からヘッドフォンが飛び出しているように見えるのは、疑似ホログラムによる効果です。実際は、3D空間に2Dの映像を掛け合わせた“2.5次元”の表現なのです。

「なぜヘッドフォンが飛び出しているように見えるかというと、偏光ガラスに囲まれたディスプレイボックスの中にスマートフォンを入れ、偏光ガラスを介して、映像を反射させることで、“擬似ホログラム”を表出させているからなんです」(池谷さん)

『3DCGホログラム』は、偏光ガラスに映像を反射させることで、正面と横から見える立体映像表現を実現している

「ボックスの上部から偏光ガラスに向けて映像を映し、その反射した光が中央に集約されることで、まるで3Dのように見えています」(川田さん)

擬似ホログラムと呼ばれるのは、現在は偏光ガラスなどの媒介が必須だからです。つまり“擬似ホログラム”とは、光を媒介する装置によって”立体的に見える”映像を生み出す技術のことなのです。

「他にもLEDライトを利用した“立体的に見える”映像の表現もあります。弊社では『3D Phantom』という製品で提供しています」(池谷さん)

「LEDライトを狭いピッチで並べたものを、扇風機のように回転させることで、そこに立体的に見える映像を表出させることができます。回転しながら各LEDのドットが色を変化させながら見せる残像効果により、映像表現を可能にしています」(川田さん)

『3D Phantom』を構成しているのはLED。ドットで構成された立体映像を表出させる

LEDも近年、高精細なものが登場。以前よりドットの粗が目立たなくなってきたことで、あらためて注目を集めるようになったそうです。またシンプルな構造で軽いため、高い場所に設置できる点も特徴のひとつです。

「現在も、LEDの技術は進化している途中です。今後さらに画質は向上していくと考えています」(池谷さん)

プロモーションはもちろん、幅広い分野での活用に期待

ここまで大きく2つ、代表的な“擬似ホログラム”の仕組みを紹介しました。 “擬似ホログラム”を利用するメリットはどんなところにあるのでしょうか?

「2.5次元の表現を可能にする『3DCGホログラム』と、LEDを使った『3D Phantom』。どちらも、あたかも空中に立体映像が浮かんでいるように見えるインパクトが最大の特徴ですから、店頭の“アイキャッチ”としては非常に優秀だと思います。初めて見た人に『どうなっているの?』と思わせる求心力がある技術だと考えています」(池谷さん)

「店頭だけでなく、ショールームで利用された事例もあります。『3DCGホログラム』のケースでは、商品の3D映像をディスプレイ内に映し出すことで、多くの人が店の前で“思わず”足を止めてしまう、という効果を生み出しました。またその驚きと感動を、多くの人はスマホに収め、SNSに投稿。情報拡散にも寄与しました。写真だけでなく、動画をアップするのも普通になった現代だからこそ、立体映像“擬似ホログラム”の拡散力も向上していると感じます」(川田さん)

『3DCGホログラム』はディスプレイ型ですが、サイズを大きくすることもできるため、“巨大な擬似ホログラム”による表現も可能です。そのためすでに、プロモーション分野だけでなく、エンターテイメントの分野でも活用されているそうです。

「世界初の3DCGライブホログラフィック劇場『DMM VR THEATER』では、巨大な擬似ホログラムと人間が共演を果たしています。同劇場では、偏光ガラスではなく、特殊なスクリーンに映像を投影することで、擬似的な立体表現を可能にしています。イメージとしては、ディスプレイを反転させて、立体映像を舞台上に表出させているとお考えいただけたらと思います」(池谷さん)

さらに、展示物としての利用法もあるそうです。

「実際にきている相談として、『デジタル水族館』があります。何も入っていない水槽に、珍しい生き物の映像を“擬似ホログラム”で合成し、まるでそこに生き物がいるかのように見せることができます。またファッション業界では、立体映像による、バーチャルファッションショーも可能です。これならモデルなしでも世界中でファッションショーを開催することができます」(川田さん)

AI、IoTと擬似ホログラムが連携する未来

私たちの日常にゆるやかに浸透し始めている“擬似ホログラム”。今後どんな展開が予想されるのでしょうか?

「表現の美しさを考えれば、インテリアとしても使えるでしょう。さらにIoT製品と紐づいて、コンシェルジュを映し出す技術として利用される可能性もあると考えています」(川田さん)

「AIやIoTとも連携し、さらに世界で研究されつつある“触れるホログラム”が実現すれば、今後リアルとバーチャルの境はどんどんなくなっていくのではないでしょうか。そうなれば生活の利便性も向上しますし、新たな活用法が生まれるはずです。ぜひ実現したいですね」(池谷さん)

映画の中だけだったはずの世界が、現実の日常となる。その未来では、AIやIoTとともに、ホログラム技術が大きな役割を果たすことになりそうです。

<360度視点で楽しめるホログラムアース>

<擬似ホログラムの活用例>

Written by:
BAE編集部