中国の国慶節も重なり、訪日外国人観光客が増えるシーズン到来! 日本人以上にスマートフォンなどのデジタルツールやSNSを駆使して旅行を楽しんでいるという中国の若者たち。今回は上野を訪れた20〜30代の中国人観光客の方々にインタビューをし、その使い方を調べてみました。
最近、街角でスーツケースを転がしながら、真剣なまなざしでスマートフォンを操作している中国人観光客を、たくさん見かけるようになりました(注1)。
その姿は、日本の若者たちの姿とかぶりますが、中国では日本よりも高度にデジタルデバイスやサービスを使いこなしているそうです。
例えば、中国の都市部では現金決済もほとんどスマートフォンのモバイル決済に姿を変え、タクシーに乗るのもスマートフォンが必須、学校の後に集まるのもPC房と呼ばれるネットカフェでオンラインゲームに興じ、ビジネスの連絡までSNSやメッセンジャーで行うのが主流と、国民生活のありとあらゆる面にスマホとSNSが深く根差しています。
中国人訪日客が使っているSNS・メッセンジャーは、中国独自の『微博(ウェイボー、Weibo)』や『微信(ウェイシン、WeChat)』がほとんど。SNS機能やポータル機能、情報交流機能などが発達していて、ポータルサイトとの関連がとても強いのが特徴です。
今回、街角で話を聞いて一番驚いたこと。それは、SNSやメッセンジャーの活用がとても活発だということ。6人からヒアリングをおこなったなか、「友達リスト」は全員150人以上登録、日常的に個別に会話する人数は多くの人が30人程度と答えていました。みんな、そんなに沢山の友達がいるの……?
「いや、友達は30~40人くらい。ほかは、家族に、一族、会社、それにご近所さんだね。それぞれ複数の人でおしゃべりする会議室があって、大体8個くらいの会議室で毎日コミュニケーションしてるよ(20代・男)」
「中国では一族のつながりがとても強いから、家族の他にも親族会議室があるのは普通だと思う。そして、一度『日本へ行く』って言ったら、そのすべての会議室から日本で買ってきてほしい商品が送られてくるんだ。それだけでリストはパンパンだね。どこの会社のこの商品、までURL付きで送られてくるから調達は結構大変。じつは、買い物の手間賃に少しお小遣いをもらっていて、旅行の足しにしてるんだ(笑)(20代・男)」
「そんなに親しくない人まで、買い物リストを請け負うことはないけど、それでも、会社やご近所さんへのお土産は欠かせない。今、手に持っているお菓子の山はぜんぶお土産用だね。これも流行があって、噂になっているあの商品だ!ってなるとポイントは高いね。あと、オトクだから大袋で買うことが多いけど、たくさんの人に配るから個別包装になっているかはかなり気になる。その情報までSNSやメッセンジャーで出回っているわ(20代・女)」
彼らが、日本で買うべき商品として参考にしているものは、書籍や情報サイトよりも、ネットでの口コミ情報が多いよう。
「中国では最近1分以内の動画投稿を共有するのがとても人気。日本のお菓子を食べてレビューしたりして投稿するんだ。それを見れば、中身がどんな感じで美味しいのかとかが分かりやすいから、結構みんな見ていると思う。日本のホテルで夜、夜景とかを撮影して共有したら、旅行の思い出にもなるしね(20代・女)」
「最近は、日本での買い物予定について調べていたら、メッセンジャーに日本企業の広告が出ることも多くなった。ドラッグストアで見せたら5%割引クーポンとか、家電量販店で何万円以上買ったら割引とか。割引情報が集めて載せているサイトをあらかじめブックマークしてから旅行に行く人も多いわ(30代・女)」
SNSのタグや、インフルエンサーから流行を知るのは、日本と変わらないようです。
「SNSだと、ウェイボーとWeChatはどっちもよく使うけど、身内からだけじゃない情報収集なら、ウェイボーを使うのが普通じゃないかな。Twitterのようなタグ機能があって、『微話題』っていうんだ。微話題につかうタグは『#日本観光#』みたいに書くことで、一つの話題が集まるキーワードを集めることができる。だから、このタグ機能を使って自分の旅行記をオリジナルのタグで一気に読めるようにしたり、『#日本菓子#』なんかでいま流行っている日本のお菓子をぱっと見つけたりすることも、簡単にできるよ(20代・男)」
「ウェイボーでは、KOL(Key Opinion Leader)って言われるフォロワー数の多いカリスマユーザーがいて、分野ごとの情報を整理したり積極的に情報発信していることが多くて参考にすることも多いね。そこからお得な情報や流行を知れたりするよ(20代・男)」
今回の取材に協力してくれた、中国人留学生に話を聞くと、SNSやメッセンジャーがポータルサイトのように機能しているという傾向は、中国は日本よりもより顕著なんだとか。
「日本だと、インターネットがあってその中にホームページがあったりメッセンジャーがあったりと、それぞれ分かれて存在しているっていうイメージだけど、中国はそうじゃないんだよ。チャットサービスの中になんでもある。企業のサイトよりメッセンジャーの企業アカウントのほうが読まれるし、手続きだってそこでできちゃう。中国人はメッセンジャーを通じてインターネットや日本って国のことを知るんだ。」
親族や近所の人までつながる広大なネットワークを駆使して、お土産の買い物リストを集約しているという事実から見えてくる、「爆買い」の背景。手間はかかりそうですが、それを逆手にとってお小遣いを旅費の足しにするという、賢い一面もありました。
印象的だったのは、SNSのタグ機能や他人が投稿したショートムービーなど、「口コミ」を駆使して旅を楽しんでいる姿。日本の若者との共通点も多く見られますが、口コミならではのリアリティやスピード感を重視するところには、情報収集に対するエネルギッシュで貪欲な姿勢が伺えます。
お国柄が如実にあらわれる、デジタルデバイスやサービスの活用法。ぜひ、皆さんも参考にしてみてはいかがでしょうか。
(注1)平成28年の国土交通省観光庁調査によると中国からの訪日外客数は約63万人。他国を大幅に上回る。