2017.12.18

「ライブコマース」成功の鍵は、インタラクティブな仕組みづくり

出演者への「共感」、番組への「参加」が視聴者の購入意欲を喚起する

2017年はInstagramの「ストーリー」機能をはじめ、動画を使ったコミュニケーションが盛り上がりました。そこで注目を集めるのが、ライブ配信でモノを販売する新しいネット通販、ライブコマース。『日経トレンディ』(日経BP社)でも2018年のヒット予測2位にランクインするなど注目され始めています。この分野の先頭を走る、株式会社Candeeに話を伺いました。

目次

「動画マーケティング」と「インフルエンサー起用」

いまや、誰もがスマートフォンを通じて、手軽に動画を撮影、共有できる時代。24時間限定公開のショートームービーを投稿するInstagramの「ストーリー」機能の流行は、象徴的な現象と言えるでしょう。それにともない、リアルタイムで動画を配信する「ライブ動画」サービスも徐々に人気を集めています。
Candeeは、Web上での生配信番組の企画・制作からスタートした企業。そこから、ファッションショーのライブ配信や、映画のPR動画、料理動画メディアなどの依頼が少しずつ舞い込み、各種メディアとのタイアップや協賛番組などを手がけ、現在は、動画マーケティング支援事業として、制作からマーケティングまでワンストップで行なっているそうです。

「家電メーカー、飲料メーカー、アパレル、ファーストフードなど、業界を問わずに幅広く引き合いをいただいてます。まだまだデジタルの動画コンテンツ分野は黎明期。プラットフォームの選び方や、データの入稿フォーマットなど、テレビと比べるとまだまだ事例が少ないためクライアント様からは信頼してご依頼をいただくケースが多いです」

Candee執行役員大川秀平さん

大川さんが動画マーケティングのトレンドの一つとして捉えているのが「インフルエンサー」の起用。

「ネットの世界では、テレビで人気のタレントよりも、インフルエンサーの方がネット上での影響力や拡散力があります。有名人は手の届かない存在といいますか、心理的に遠い存在と感じてしまいますが、読者モデルやフォロワー数の多いインスタグラマーは、身近に感じて手が届きそうな存在。憧れを喚起する出演者が、視聴者の共感を呼ぶんです。そういった理由から、昨今動画広告にも、インフルエンサーを起用する事例が増えています。」

Candeeでは、インフルエンサーたちをライブ配信に起用した新しいECの形である「ライブコマース」も提供しています。

モバイル時代の新しい買い物体験「ライブコマース」

ライブコマースは、「ライブ配信」を利用した新しい形のネット通販。モデルやインスタグラマーといったインフルエンサーが、番組中に視聴者とコメントでコミュニケーションを取りながら、オススメのアイテムを視聴者がその場で購入することができます。数年前より欧米や中国でこうしたスタイルを採用するECサイトが増え、日本国内での事例も見られるようになりました。
時代の潮流に乗ったライブコマースは、『日経トレンディ』(日経BP社)でも2018年のヒット予測2位にランクインするなど、いまもっとも注目のキーワードとなっています。

2017年6月7日に公開された「Live Shop!」も注目のライブコマースのひとつ。
(番組のアーカイブはPCのWebブラウザーでも視聴できます)。

実際に配信されている番組を観ると、テレビのように多くの視聴者に向けて情報を配信するショッピング番組と違い、「ユーチューバー」のような個人によるネットストリーミング配信とも違う絶妙のバランス感覚が特徴です。もう少し具体的に言えば、スマホ特有の縦動画撮影を用いていてもカメラワークや照明・音声など技術的な面はプロフェッショナルなことが見て取れる一方、視聴者との距離感ははるかに近く、ライブ配信ならではの親しみやすさや出演者との双方向コミュニケーションがユーザーを惹きつけているようです。

スマホならではの動画のニーズはどこにあるのかを突き詰めていった結果、「Live Shop!」はテレビ的な仕組みを移植したネット番組とも個人が運営するユーチューブチャンネルとも異なる「プロによるスマホ動画」という新しい見せ方に行き着いたのです。

プロダクトファーストからコンテンツファーストへ

“モテクリエイター”ゆうこすさんの番組では「焼肉デートの時のコーディネイト」といった身近なテーマを題材としていて、視聴者との“共感”を重要視していることがうかがえます。

「これは従来の商品ありきのプロモーションでは最終的に購入へと転換されるCVRが高くなりにくかったことが背景にあります。ソーシャルライブコマースではあくまでもコンテンツを基点としてライブ配信を行い、共感が得られた視聴者が購入に至るという流れになっています」

視聴者側との「共感」を表現する仕組みも用意され、前述のコメントやアンケート機能以外にも、番組中に賛意を表すハートボタンを押すとライブ画面に流れるようになっています。共感の形を可視化することで、番組に参加しているという一体感をより得られやすいという仕組み。そのほか、画面上に流れるアイコンに合わせてスクリーンショットを促すゲームなど、多種多様な参加型のコーナーが用意されています。
「Live Shop!」は20時頃からスタートする番組が多く、ライブの配信時間は30分~1時間。ライブ配信としては長めとなりますが、参加できる工夫が凝らされているので、最後まで熱量が冷めることがなく、視聴者を番組に引きつけることができるのです。

視聴者は、インフルエンサーのコアファンが多いことも奏功し、女子高生ユーチューバーふくれなさんが出演した番組では番組開始約10分間で80着以上もの服が売れたこともあったといいます。

「視聴者との双方向性を出すために、出演者にはスマホを手にしてコメントを読み上げてもらうなどの演出も行なっていますが、最終的には“●●ちゃんの着ているこの服が欲しい!”といった共感が売り上げの原動力となっています」

ファッションやアパレルに止まらないライブコマースの可能性

現在はF1層(18〜24歳までの女性)をターゲットとした番組が中心を占めており、ファッションを中心としたECからスタートしたライブコマースですが、その可能性はまだまだ未知数。今後は、視聴者も若い女性のみならず、男性や幅広い年代への浸透していくかもしれません。
この数カ月の間に、職人の手作業を配信する靴や鞄、時計、伝統工芸品などのECサイト、クリエイターの作業風景を配信する投げ銭サイト等のプラットフォームもたくさん出てきています。いずれにせよ、大切なのは視聴者を惹きつける工夫。ニュースやスポーツなどのイベントなど「臨場感」や「双方向性」が重視されるジャンルは強みがあると言われています。

「Candeeでは、“ライブコマース×D2C”の特徴を生かした新しいマーケティング手法の開発や“ライブコマース×スポンサー広告”といった配信も展開していきます。さらに、ソーシャルビデオプラットフォーム構想「Live Up!」の中で、「Live Shop!」以外にも 「News、Sport、Variety、Music」など、多様なカテゴリのプラットフォームをバーティカルに構築していく予定です。
動画マーケティング支援においても、予想以上に評判を呼んだものが、就職活動の模擬面接をライブ配信した企画です。生放送はリアルタイムにありのままを伝えられるため、これまでとは異なるニーズを掘り起こせるのではないかと考えています」

必要なのは生活者に寄り添う姿勢

大川さんが終始強調するのが、まだまだWebの動画マーケティングは黎明期であるということ。その手法も、手探り状態だと言います。

「ライブコマースをはじめ、インスタグラマー、インフルエンサーなど、言葉だけが先走り消費されていますが、企業側の認識や、ビジネスモデルなど、これから確立されていく必要がある部分は多々あります。例えば、インスタグラマーよりも、マスに影響力のある有名タレントの方が上であるという認識の方が多いのは事実ですね」
 
大事なのは、リアルな生活者に寄り添う施策やコンテンツづくり。これまでの常識にとらわれず、本当に視聴者の共感を得られる方法は何か? しっかりと見極める必要がありそうです。
そして、視聴者を惹きつける工夫。ニュースやスポーツなどのイベントなど「臨場感」や「双方向性」が重視されるジャンルは強みがあると言われています。
2018年はライブコマースが花開き、「成功法」が確立されていく年となるのではないでしょうか。

Written by:
BAE編集部