2018.02.09

ジェネレーターに秘められた可能性、新ロゴデザインの開発(第0回)

第0回:VIリニューアル。その時社内で何が起こったか。

今年、創業から節目の年を迎える「周年記念企業」は14万社、100周年はパナソニックや帝人など1308社、上場企業は70周年が最多と発表された。その節目の年に、企業は周年事業として ブランディングのためCIやVIリニューアルをすることがある。
企業のブランディング、VI制作を行う電通テックが自社の事業再編時にどのようなリブランディングを行ったのか、CI・VIに込めた想いとは?その取り組みについて話を聞いた。

電通テックは「本気で変わる」という経営層の意向

プロデューサーの徳久正樹氏 アートディレクター隈部浩氏デザイナーの川原田俊氏 左から 隈部浩/松村 元樹/佐々木 望/徳久 正樹/川原田俊


電通テックは、プロモーション領域の施策を実行する専門社として数多くの案件に携わってきた。昨年、事業再編をし、デジタルを起点にプロモーション領域全般の課題解決能力を持つ次世代型のプロモーション企業となった。

その理由は、電通テックの強みである「エグゼキューション」、“モノを納めるところ”まで責任を持つことを保ちつつ、専門力を高めるということ。そして、デジタルに特化し、社内の制作開発部隊によるデジタル内製型と、テックグループ各社その連携による開発・設計も行う総合的なプロダクションラインという、2つのプロダクションラインが生まれた。
この事業再編という大きな変化は、単なる分社化とは大きく違っている。まったく新しい「電通テック」を表現するためにはどうすればいいか——その新しい歩みを表現するために、コーポレート・アイデンティティ/ビジュアル・アイデンティティ(CI/VI)が一新された。
リブランド作業を任命されたのは、電通テッククリエーティブの松村元樹氏、佐々木望氏、隈部浩氏、川原田俊氏、徳久正樹氏ら。その中で、デザイン・コンセプトを隈部浩氏が中心に担当した。隈部氏は広告の企画・制作だけにとどまらず、幅広い視点で消費者との コミュニケーション・デザイン全般を手がけるクリエイターである。

隈部 組織が変わるという事は、表層の変化だけでなく、内側、社員一人ひとりの気持ちから変わらなければならないということ。そうでなければ、本当のブランディングは成し遂げられません。

まずはロゴの文字部分から解説しよう。新しいロゴはボールド・大文字での設計。クライアントのあらゆる状況を受け止め、力強く前進し、実行するという意思を表明している。

隈部 最初に経営層と話をした段階では、社名について検討するという段階でした。心機一転、ということでコピーライターの佐々木氏が中心に色々なネーミングを考えました。しかし、電通テックという20年の歴史がある名前は資産だから、残したいというのが社員の願いでした。そこで、「新しく変わった」ということを強く印象付けるために社名を変更するのではなく、ビジュアル・アイデンティティ(VI)をつくろうというプロジェクトにベクトルを変えて行きました。

電通テックはこの組織改編で、本気で変わる。それを伝えたいという思いがあった。以前のロゴは、電通のロゴをそのまま使ったものだったため、「電通テック」としての個性を持ちたい、別会社だということを打ち出したいのが経営層の意向だった。

隈部 ネーミングを変える意義とは何か、ということから、まず紐解いていきました。VIであるロゴマークを変えることによる社内・社外の影響を整理して、経営層に向けてビジュアル的な資料を作ったんです。社内的な影響でいうと、社員が胸を張って社外の人に見せられること、働くときのモチベーションが上がるということ。社外的には、社会から見られた時に、あの会社は何をしていて、どういう理念でどういう思想を持っているのか、が伝わること。変わるということで、新しいことに挑戦しているという意思を伝えたかった。

消費者と、世界とつながること。「円環」というキーワード

隈部 社内スタッフと、言葉とビジュアルの両面でコミュニケーションを考えていきました。テックを紐解いて変えていく考え方もあるんじゃないかということで、スローガンを検討するということも。

変えることで、こういう風に新しくなるということを世の中に対して宣言するという意思があり、ロゴマークと同時に、スローガンも変更することになっていた。

隈部 もともと、Technology For Excite Communicationというタグラインだったのですが、ブランドイメージを変えていくということで佐々木氏、久我氏、社長、経営層中心に「Activate More, Engage More」に変更しました。「エンゲージ」は円環にも繋がる大きなテーマです。電通テックはデジタルを起点にプロモーション領域の課題を解決する企業になる、という意思表示ですね。

電通テックの目指す方向が誰にとってもわかりやすく見えるということだ。ブランディングに求められるのは、新しさ、今の時代感、わかりやすさだった。

隈部 会社としては、クライアントとしっかり足並みを揃えて制作物を収める、最後までやりきる組織だということを伝えたい。それを念頭に置きながら、ネーミング、ロゴ、スローガンを変えていく検証に入っていきました。

その中のひとつに、今回のVIの柱になる、“円環“の源になるプランがあった。

隈部 一つに繋ぐ、とか、一つにする、というコンセプトです。「エンゲージメント」というテーマにも繋がる。ここから輪っか、繋がり、というテーマを残していくべきだと考えるようになったんです。

エンゲージメント

社名は「電通テック」のままという決定が下された後にも、「エンゲージメント」というキーワードは残った。消費者と電通テックが繋がっていくということを表す、重要なキーワードだ。

隈部 ロゴだけでなく、何かエンゲージメントを表すものがロゴのそばに常にあれば、その思いも伝わるのではないかと考えました。
企業と繋がること、個人と繋がること、世界とつながること、色々なプロモーションの手法をつなげていくこと、最先端のマーケティング思考を組み合わせて目に見える結果に結びつけるということ。電通テックができることを、意思表示をしていく。プロモーション領域のプロフェッショナル集団としてもっと多様で、もっと自由で、そして主体的に進化し続ける象徴であり宣言、ということでまとめたのが、この時のロゴの考え方だったんです。

そこから、「円環」を様々なテーマに落とし込んだビジュアルのスタディが続く。

隈部 すごく小さいものからすごく大きなものまで繋げる、ということをグラフィカルに表現して、こういう形で広告を作ることも出来る、という提案までしました。

経営陣の近くで進められた。だから「本音」が聞けた

電通テックでは、「クリエイティブセンター」を中心にクリエイティブ全般を行う。そこではプロデューサー、クリエイティブディレクター、コピーライター、アートディレクターが在籍し、それぞれの特徴を活かせるチームを編成してクライアントに提案している。通常、これだけの大きなブランディング案件では、社外のデザイナー・クリエイターに依頼するケースが多いのだが、なぜ社内でてがけることになったのだろうか?

徳久 今回は分社化を公表前の案件だったこともあり、社内のクリエイティブで制作することになりました。
隈部 経営陣が実際にどういうことを考えているのかをダイレクトに、キャッチボールしながら進めることが出来たのが、すごく良かったと思いました。本音を聞いて、デザインとかクリエイティブで体現するという流れがやはり健全だと思います。

今回のプロジェクトで顕著なのが、アイデアを出す時に、ビジュアルを提示しつつアイデアを進めているのは、クリエイティブディレクター、アートディレクター、コピーライターらクリエイターが、経営層と直接話をしながら進めていったから出来たことだ。

隈部 経営層が考えていることをアウトプットし、コミュニケーションとして社会に伝えていく部分で、クリエイターが役に立てるのかなと。それが絵に出来るアートディレクターだったり、的確な言葉を引き出すコピーライターの役割だと思います。
徳久 もし経営陣が会議で決めていたことだけだったら、電通テックという名前は残らなかったかもしれない。社名を変えなくても変われるんだというアウトプットを見せられたのは、クリエイティブの力かもしれません。
隈部 文字だけの資料だと、理屈ではわかっても、具体的に「どう変わるのか」がわかりづらい。感覚の部分でのゴールは見出しづらいので、アウトプットの表現に繋げられるクリエイティブが役に立てるところなのかなと。例えば経営陣がブランディングに対して「ちょっと違うんだけど」と思っているけど、口に出すのは難しい。そんな時にビジュアルがあるとそこから活発な意見交換が起きて、プロジェクトが進む助けになるんです。
徳久 これまでも電通テックでは、デザインコンサルは行っていましたが、今後はより強化していきたいと思っています。企業と寄り添いながら課題を解決して行くということですね。企画とコンサルというダイレクトな話と、それを形にするクリエイティブが、我々の目指すところです。

最後に、アートディレクター・隈部に、今回のプロジェクトを経て、これから電通テックの仕事の可能性がどう広がっていくと感じたかを聞いた。

隈部 プロモーションを得意とする電通テックが、クライアントに対して、一過性のキャンペーンだけでなく、その企業が社会の中でどのような立場にあり、どう進んで行く事が最善か、電通テックなら、ブランディング、アクティベーション、安心安全の納品まで寄り添い、担う事ができると言う事を、これから伝えていけらたと思っています。
Written by:
齋藤 あきこ
Photographer:
YOSUKE SUZUKI

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