2018.10.04

1 to 1|データを統合し、顧客ひとりひとりの“顔”を「見える化」

デジタルマーケティングをはじめる人に聞いてほしい、3つのはなし 第1回

Photo by Charles Deluvio 🇵🇭🇨🇦 on Unsplash
この連載では、秋入社の方や、部署異動等でこれからデジタルマーケティングに関わる方や、そもそもデジタルマーケティングって何なの?という方に向けて 「忘れちゃいけない大前提」、「困ったときに立ち戻れる道標」をお伝えしていきます。

昨今のビジネスにデジタルやマーケティングが必要不可欠であることは言うまでもなく、 多くの方がそれぞれの立場や担当する業務に応じて、業界メディアやセミナー、関連書籍から、日々目まぐるしく進化・変化する情報やノウハウをインプット・アウトプットされていると思います。
目的に最適なSNS、媒体、チャネルを選定。様々なサードパーティデータを活用、MAやDMPを連携して施策を展開、数多ある計測ツールの駆使に加え、なかなか動いてくれない他部署からの各種社内データを総動員したレポーティング、施策の評価、PDCAを回し・・・。さらに、デジタルを活用し、顧客を効率的に獲得。結果を出し、収益をあげ、事業を成功させる――。実際の業務において、やるべきこと、変えていくべきことは、本当に尽きません。

第1回は、「1 to 1(One to One)」をテーマに、企業から生活者へのコミュニケーションをより豊かで価値あるものにするために必要なポイントをお届けします。

目次

お客様の“顔”、見えていますか?

唐突ですが、この図を見てください。どうやら誰かの顔写真のようですが、特徴はおろか、性別や年齢も定かではないですね・・・。この人とコミュニケーションをとろうと思ったら、どんな話題が良いのか、何が好きそうなのか、まったく予想がつかず苦労しそうです。これがプライベートでの話であれば少しずつ対話を重ねながら、その人の嗜好や興味関心を探っていけば良いのですが、ビジネスとなると話が変わってきます。たった1回のアプローチの失敗で、あなたが担当する商品を買ってくれないどころか、二度とあなたの言葉に耳を貸そうとすらしなくなってしまう恐れもあるでしょう。

次の図を見てみましょう。

左から右に行くにしたがって、少しずつ、写真の人物のディテールが分かってきました。真ん中の写真からは、「どうやら男性である」「メガネをかけている」「白いカジュアルなシャツを着ている」といった情報が読み取れると思います。右の写真は完璧で、おおよその年齢や髪型まで分かるほどはっきりと顔が見えていますね。これであれば、コミュニケーションの糸口も見つけやすいのではないでしょうか。(少なくとも、女性向け商品や、高齢者向け商品を薦めるようなことはなくなるでしょう)

デジタルマーケティングの現場では、実際に会うことのできない顧客に対して、データを活用してひとりひとりの“顔”を「見える化」することで、最適なコミュニケーションを図ることができるようになります。では、そのために必要なデータとは、一体何なのでしょうか?

“顔”の「見える化」のためのデータ活用

あなたの顧客の“顔”を「見える化」するために、活用できるデータ、もしくは、活用のために施策などを通して収集することができるデータはたくさんあります。ポピュラーな5つの例を簡単に紹介しましょう。

サイト来訪データ

最もポピュラーで、取り扱うことが多いデータの1つでしょう。どのくらいの頻度で、何時ごろに、どのくらいサイトを見て、どのページで見終わるのか。そういった行動を定期的に見ることで、顧客の商品に対する関心度が伺えます。

アンケート・調査データ

こういった定性的なデータも時として課題解決の糸口になります。顧客が商品に対して満足していること、不満に思っていることを聞くことで、次の施策で行うべきことが見えてくるかもしれません。

購買データ

言うまでもなく、もっとも大切なデータです。誰が、いつ、どこで、どの商品を買ったのか。これを活用できるのとできないのでは、大きな差が生まれそうです。

キャンペーン応募データ

キャンペーンに応募する際、顧客に入力してもらうエントリーフォームはデータの宝庫です。どんなキャンペーンに応募したのか(=嗜好)をはじめとして、性別や年代、居住エリアなど、極めて貴重で詳細な情報を得ることができます。

会員プログラムデータ

もしあなたが担当する商品やブランドが会員プログラムを行っているのであれば、それはとても重要なデータの情報源になるはずです。顧客が保有している会員ポイント数の取得履歴を見るだけでも、その顧客が今、あなたの担当商品に対してどういう感情をもっているか分かるはずです。

目指すは「1 to N」ではなく、「1 to 1」

様々なデータを顧客ひとりひとりに紐づけて活用することで、ぼんやりとしたモザイク画を相手にすることはなくなり、“顔”が見えた顧客との、「1 to 1(One to One)」でのコミュニケーションが可能になるはずです。メガネの彼が「東京に住んでいる」「34歳の」「最近キャンプに興味があり」「先週も自社のアウトドア関連商品のページを見ていた」といったことが分かっていれば、あなたが担当する商品やブランドに興味を持ってもらうために話しかけるメッセージやその方法は他の顧客とは異なってくるはずです。一方で、そういったデータがなければ、そのメッセージは他の多くの顧客と共通の、ぼんやりとした内容である、「1 to N」のコミュニケーションになってしまうでしょう。

データについて気を付けるべきこと

モザイク画を相手にした「1 to N」ではなく、顧客の“顔”をしっかりと「見える化」した、「1 to 1(One to One)」でのコミュニケーションの大切さと、そのためのデータ活用についてお話しました。


最後に、今年2018年の4月にFacebookの個人情報の流出問題が報道され、世間の大きな関心を集めました。それを受けて、企業と生活者との間におけるデータの取り扱いや情報セキュリティ対策について、改めてポリシーの見直しや明示が多くの企業、サービスでなされています。また、5月23日に欧州議会、欧州理事会および欧州委員会で策定した新しい個人情報保護の枠組みである「GDPR(EU一般データ保護規則)」も、企業がもつ顧客データについて考える大きな契機になっています。いずれにしても、大切な顧客のデータを「いつ」「どのように収集し」「何の目的で」「どのように使うのか」といった情報は、顧客に対して事前に分かりやすく明示し、それに対する同意を得たうえで収集、活用することが大原則になります。あなたの会社の法務やコンプライアンスを扱う関連部署ともしっかりと連携し、正しいデータ活用を行いましょう。

・参考リンク
Facebook プレスリリース
個人情報保護委員会 GDPR紹介ページ
経済産業省 データの利用権限に関する契約ガイドライン  

さて次回は、「2lines」と題しまして、あなたが見つけるべき、動かすべき顧客がいる“場所”についてお伝えします。

高橋 潤平

株式会社電通テック データドリブン・マーケティング室 デジタルマーケター

デジタルキャンペーンやオウンドメディアなどの企画制作・運用に従事した後、 現在はあらゆる顧客接点データから生活者一人ひとりとの 最適なコミュニケーションを支援するLINE活用サービス開発を行う。

LINE ビジネスコネクト活用プラットフォーム「1/0ワンゼロ」
SNSマーケティングサービス「SC121」

Written by:
高橋 潤平