2019.06.21

カードでスマホに“触れて”コンテンツに誘導。驚きとワクワク感を生み出す新たなO2Oデバイス

コレクション性や自由度の高さで注目のツール「TOUCHCARD®(タッチカード)」

一見、ありふれた紙のカードなのに、スマホにタッチするとデジタルコンテンツが起動する――そんな、今までにない使い方のカードが登場しています。
名刺、ショップカード、ゲームなど様々に活用されてきた「カード」を、O2O(Online to Offline)デバイスとして利用することにはどのような効果が期待できるのでしょうか。このカードの開発を行った、Touchcard株式会社の代表者・佐藤 敦さんにお話を伺いました。

目次

スマホにワンタッチ! 限定コンテンツに飛べるカード

——TOUCHCARD®とはどのようなカードでしょうか。

特殊な印刷技術を使ってカードに独自の座標を埋め込み、スマホの画面にタッチするだけで、所定のWebサイトコンテンツを表示できるカードです。

カードのQRコードを読み取り後、カードをスマホに直接当てるだけ(※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です)

私はこれまで印刷分野でオモチャやゲームのカード作りに携わってきました。カードのポテンシャルはコレクション性や携帯性など非常に高く、ヒットすると爆発的な数字をうち出してくれます。玩具業界でも、トレーディングカードやカードゲームは主要アイテムの一つに位置づけられており、市場規模は870億円を上回るというデータがあります。このようなカードの魅力や特性をPRなどに生かせないかと考えて「TOUCHCARD®」を開発しました。

——仕組みとしては、どのようになっているのでしょうか。

通常、スマホの画面には5カ所まで同時に触れて(タッチする)操作指示を与えることができます。そこで、カードに最大5カ所分の座標を埋め込むため、特殊インクを使用して印刷します。
この特殊インクによって人間の手から体内の静電気がカードに伝わり、スマホ側がカード表面の座標を感知してコンテンツが表示されます。
この仕組み自体や、印刷技術、特殊インクなどに関連した国内特許の取得、申請を行っています。

体内の静電気が特殊インクを通じて、スマホの画面に伝わる。ブラウザ側にはタッチされたポイントに応じたコードが埋め込まれており、設定されたアクションを返せる

最初はアプリの開発を考えていたのですが、「ユーザーにアプリをダウンロードしてもらうのはハードルが高い」「手間が増えると、エンゲージメント率が下がる」といったクライアントの懸念を解決するため、最終的にはブラウザで開発しました。
スマホのメーカーや端末独自の特性やクセに左右されないよう、AIを組み込み、誤作動が起きづらいような工夫も行っています。

——カードを経由してアクセスしてもらうことで、どのような情報を収集することが可能でしょうか。

まず、端末のGPS情報を利用することもできるので、いつどこからアクセスしたかわかります。例えば、配ったカードをその場でスマホにタッチしたのか、それとも帰宅してからタッチしたのか。つまり、いつ、どこで、何度アクセスしたかなどもWebシステム側で取得可能です。
また、会員情報との紐づけや、アンケートの回答などと組み合わせれば、より細やかなデータ取得や分析もできます。ポイントの配布といったインセンティブの付与といった利用方法も可能です。

(参考/ビッグローブ株式会社 「BIGLOBE TOUCHCARD」)

「タッチしてもらう」ことで成約率が数倍にも

——カードからスマホでアクセスしてもらった後には、どのようなコンテンツが表示されるのですか。

基本的に指定のサイトに誘導するので、どんなコンテンツでも表示できます。限定の画像や動画、アンケート、申込みフォーム――使い方はアイデア次第ですね。コンテンツの更新もできるので、定期的にカードからアクセスしてもらう使い方もできます。

さらに、カードの置き方を変えることで、複数の情報にアクセスが可能です。例えば、あるサッカーチームの選手カードをスタジアムで配布した際には、表面には、カードからしかアクセスできない特別動画の配信を設定しました。そして裏面からは、スタジアム整備のクラウドファンディングのお知らせを表示できるようにしました。

もちろん、カードのデザインも自由です。この時は、選手の顔写真やプロフィールが載っているカードがランダムで配布されました。

——チームのファンの方にとっては、こういったカードは捨てられないですし、カードを目当てとした集客にもなりますね。

その通りです。ファン同士で好きな選手のカードの交換も行われていたようです。「家族4人で次回来たら、4枚もらえるの?」という方もいらっしゃって、コレクター欲をそそっていたことがわかりました。

同様に、ある人気バンドの限定コンテンツが見られるカードをCDショップの店頭でのみ配布したところ、普段はあまり店頭に足を運ばないファンの方々が訪れてくれるきっかけになった――という事例もありました。

「その場所に行かないともらえないカード」というプレミアム感でファンを引き付ける

——カードというデバイスを加えただけで、成約率が大きくアップした事例もあるそうですね。

はい。金融関連サービスの新規顧客開拓に向けたDMではTOUCHCARD®をプラスしただけでサイトの閲覧数や成約率が「DMのみ」と比べて数倍の成果があったという結果が出たそうです。

——DMにカードをプラスしたことで効果がアップしたのはなぜでしょうか。

今まで見たことがないカードが封入されていたことで、受け取った方が「やってみよう」と思ってくださったようです。「カードでスマホにタッチする」という体験は、まだまだ珍しいものでしょう。シンプルで簡単な操作ながら、「カードをタッチすると何が起きるのだろう?」というワクワク感や期待感といったエンタメ性もプラスできます。現実的なアクションだけでもデジタルコンテンツだけでも得られない楽しさが感じられるのではないでしょうか。

佐藤 敦さん
Touchcard株式会社 代表者・佐藤 敦さん

ポスターなど、印刷できるものであれば活用可能

——この仕組みを生かして、様々な情報に誘導したいといった相談も、数多く寄せられているそうですね。

はい。例えば、「インバウンド向けに、観光情報などへの誘導を目的としたカードを配布したい」という相談もあります。観光動線やアクセスデータの取得はもちろん、帰国後のユーザーとの接点作りにも活用できるでしょう。「旅アト」へのアプローチは、次回もまた来てもらうためのPRやコミュニケーションのきっかけになります。

観光スポットなどへ誘導するツールとしての活用も可能。デザイン次第でお土産にもなり、情報も合わせて持ち帰ってもらえる

——カードではなく、その他のものに同じ印刷をして、スマホにタッチしてもらう仕掛けなども可能でしょうか。

はい。同じ仕組みをハンコ型に組み込んだ「電子スタンプ」を作ったり、大判のポスターの一部分に組み込んだりすることもできます。

この仕組みを利用して、ある住宅展示場では、見学者がどのルートを何分くらいかけて巡ったかというデータを取得したり、最後にアンケートへ誘導するなど、見学者ごとの関心を把握するために活用されました。

また、赤坂サカスでの夏休みのスタンプラリーにも起用されました。しおり、コースター、うちわなど、印刷できるものであればどんなものにでも活用が可能です。

ただ、やはりカードなど、コレクションできるアイテムとの相性は特に良いようです。「手元にモノが残る」ことは、この仕組みの大きな魅力の一つです。どれだけデジタル化が進んでも「気に入ったモノを手元に残しておきたい」という人の欲求はなくならないと思います。

——今後は、より意外な使い方や、他のテクノロジーと組み合わせた活用なども考えられるでしょうか。

はい。ギフトカードやプリペイドカード、クレジットカードなどにも印刷を応用できるのではないかと考えています。この技術と、カードならではの集客力やインセンティブを活用することで、既存のものにも新たな価値を生み出すことができるでしょう。


世界中で似たような技術が開発研究されている中、一歩先に実現にこぎつけたTOUCHCARD®。「カードならでは」の魅力があり、アイデア次第で使い方が広がる自由度の高さをもっているからこそ、今後O2Oデバイスを使ったプロモーションにも新たな変化をもたらしてくれそうです。

Written by:
BAE編集部