2019.12.13

サステイナブルな消費と「自分らしさ」を同時に叶える“B to Me”のモノ作り

次世代のブランドカスタマイズ「YR LIVE」

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  • 昨今のプロモーションや販促において、重要なワードの一つとされるのがパーソナライズド。“B to Me”のプロダクトがSNS上でも話題です。
    例えば、2013年にイギリスで誕生し、2017年から国内でもローンチした「YR LIVE(ユアーライブ)」は、デジタルツールを使って、ユーザーがカスタムしたブランドアイテムがその場ですぐに作れるファンコミュニケーションツール。ブランドとユーザーのエンゲージメントを高めるほか、プロダクトを通じて若い世代が求める“自己実現消費”を叶える手法としても注目されています。 人気の背景や効果の理由について株式会社YR JAPANの小林さんと塩田さんにお話を伺いました。

    目次

    ユーザーは検索も比較もされないモノを求めている

    ——「YR LIVE」はどのようなサービスでしょうか。

    小林

    2013年にイギリスでスタートした、オリジナルTシャツが作れるショップが起点です。即時性や楽しさが評判になり、ブランドや企業とのコラボが増えて、グローバルに発展してきました。日本では2017年からスタートしました。

    世界中で4,000件以上のブランドや企業とのコラボを実現。最新のシステムやプリンターを含むファブリケーションツール等の導入で、数分間で高品質のアイテムが完成する

    ——どのようなビジネスに活用されているのでしょうか。

    小林

    アパレルやコスメブランド、その他食品メーカー等の、常設店舗、特設店舗、イベント、展示会、パーティー、ECサイト等で、販売用、PR、店頭販促、ノベルティなどに幅広く活用されています。
    アイテムも、ベーシックなTシャツやトートバッグのほか、マグカップ、ステンレスボトル、スマホケース等へのライブプリントや、刺繍、ワッペンの接着までさまざまな種類があります。

    ソフトウェアの開発、ファブリケーションツールの提供、製品化のための開発から、ブランドイメージに合わせた企画のプロデュース、設営・運営まで一元化されている

    ——オリジナルアイテムを作るサービスなどは以前からありましたが、今改めて注目される理由は何でしょうか。

    小林

    以前はオリジナルアイテムというと、高額なオーダーメードか、ごくチープなプリントのどちらかでした。しかも、ユーザーは自分で予算や技術を選択する必要があったのです。しかし、「YR LIVE」を活用すれば、自分好みで高品質のアイテムをその場で作ることができます。
    ユーザーの中でも特に若い世代は、“自分が本当に欲しいもの”にお金を払い、検索も比較もされないオンリーワンを求めています。実際にハイブランドとのコラボでは5000円台のシャツがカスタムを経て1万円以上で買われる例もあります。

    塩田

    「大量に作って売る」「みんなと同じモノを買う」という既製品のスキームから離れたモノの売り方・買い方を可能にするサービスであるという点も、重要なポイントです。
    まず、そもそもの背景として、今の世界は“売れない既製品だらけ”の状態に陥っています。昨今のアパレルの年間廃棄量は30億点を超え、供給と廃棄の比率は4:3にものぼると言われており、メーカー側は激化した価格競争に疲弊しています。既存のモノづくりに、限界が見えてきたのです。

    フリマアプリなどによるC to Cのサービスや、リサイクルなども進んではいますが、大量生産・大量消費・大量廃棄の根本的な解決策とは言えません。 その中で、よりサステイナブルなモノづくりが求められるようになり、オリジナルやカスタムが再び力を持つようになりました。
    この点も「YR LIVE」が、自分らしさにこだわると同時に、環境問題などにも関心があり、多くのモノを持たず、コスパにうるさい若い世代から特に注目されている理由になっていると思います。

    ボトルや刺繍入りのバッグなども高品質。ノベルティとして配布していたアイテムも、販売にシフトできる

    ——モノづくりと消費について、考え方と技術の両面からのアップデートが進んできたという感覚でしょうか。

    塩田

    そうですね。デジタルネイティブと呼ばれる10代、20代にとって、アプリケーションを使ってデザイン等をカスタムすることが当たり前になっているということの影響も大きいでしょう。
    例えば、彼らはInstagram上で日常的に写真を加工したり、デコレーションしたりしていますよね。しかも、そこに自分の感情を乗せることを直感的にこなしています。「YR LIVE」も、言わば“モノのInstagram化”ですね。

    ユーザーとブランドの共創がモノの価値を高める

    ——どのような実例があるでしょうか。

    小林

    例えば、有名アパレルブランドのショップでは、トートバッグやポロシャツのカスタマイズを展開しています。モニター上でデザインや素材、色などを選ぶことができ、ワンカスタマイズごとに値段がプラスされる形ですが、遠方から来て何十パターンも作られるファンもいます。

    ラグビーW杯のパーティーで提供したユニフォーム型のノベルティなども好評。名前や応援するチームの国旗などをカスタムでき、その場でプリント。着て帰る人もいたという

    ——「LIVE」と銘打っている通り、その場でカスタムを体験できることがポイントでしょうか。

    小林

    自分の趣味や趣向を反映させたモノ作り体験は、愛着や自分らしさという付加価値に繋がります。ブランド側から見ると、結果的にユーザーとのエンゲージメントを高めたり、ファン化をサポートする効果が期待できるでしょう。

    例えば、こちらは「OREO meets GLOBAL WORK」という、お菓子とアパレルのブランドによる共同プロジェクトです。イベント期間中に買い物をされた方に、大きなタッチパネル上のOREOに顔を描いてもらい、それをトートバッグにプリントしてプレゼントしました。

    一昨年に埼玉県内のショッピングセンター内で展開したところ、家族連れを中心に好評。「作れる」楽しさや満足感は販促やブランドイメージの向上に自然と繋がる
    塩田

    この時は、小さい子どもやおじいちゃんおばあちゃんなど、どんな人にも“お絵描き体験”を楽しんで欲しい、という狙いがあったので、オレオの白いクリームを指で削るように描くパネル上のUI開発にもこだわりました。
    楽しい体験はSNSとも好相性ですし、「この間、こういうのを作ったよ」という話題性や訴求力が生まれるという効果もあります。

    ——ブランドと気軽にコラボできるという点も楽しいですね。

    塩田

    アイテムの品質を担保しながら、その価値を高めるには、「ユーザーとブランドの共創」が必要です。それに、欧米人にとっては、クリエーティブもカスタマイズも自己表現が主題ですが、東洋人にはフラットな生産者という立ち位置がフィットしますから、コラボが最も取り組んでもらいやすい形だと考えています。

    ——ただ、反対にカスタマイズがブランドらしさの妨げになるといった心配はありませんか。

    塩田

    イニシアルを入れる程度では、ユーザーの満足度は低くなります。しかし、自由に好きなだけ絵を描ける状態にしてしまうと、おっしゃる通り「完成したものはそのブランドの商品と言えるか」というボーダーに抵触します。
    ブランドのアイデンティティを損なわないよう、ブランドの思想やストーリーにしっかり基づいた設計が必要です。
    ブランドらしいデザイン素材を豊富に提供しながらも、誰がカスタムしてもある程度整った仕上がりになるように、UI、UXを調整するというのが、現実的な落としどころだと思います。

    小林

    「展開する場所はイベントか/店舗か/サイトか」といった条件も関係してきます。
    イベントなどで短時間に多くの人に体験してもらいたい場合には、カスタムの内容を厳選する場合もあります。常設なら、時間をかけてもらうことも大切です。「じっくり作れる」ことは店舗への来店理由になり、販売スタッフとのコミュニケーションのきっかけにもなるでしょう。人は時間をかけて仕上げたものほど、愛着を感じることもわかっています。
    オンラインなら、時間や場所の制限はありません。リアルな体験とは異なりますが、「ライブを観に行く前に、ライブTシャツをカスタムする」といった形であれば、また違う体験に繋がります。
    ちなみに、ライブグッズなどを事前にカスタムして注文するといったサービスは、ファンは長時間物販に並ばなくてすむ、販売側は在庫を抱えなくてすむといったさまざまなメリットも提供できると考えています。アーティスト自身がカスタムしたバリエーションなどを販売する企画も人気があります。

    (写真左)YR JAPAN CXO 塩田篤史(しおた・あつし)さん
    (写真右)YR JAPAN CMO 小林翔太(こばやし・しょうた)さん

    「価値選択消費」から、自ら創造する“自己実現消費”へ

    ——“体験型のモノ作り”の活用は、今後も拡大していくでしょうか。

    塩田

    カスタマイズを体験することでそのブランドがユーザーにとってどういう存在かということが顕在化しますし、手元には実際に作ったモノが残るという、デジタルにはない強味があります。
    「モノづくりに関わりたい」という気持ちは人間のプリミティブな欲求の一つですから、そこに訴えかけるプロダクトは影響力がありますし、先述の通り、そこに自分らしさや思い出が加わることで、モノと人との結びつきはより特別なものになります。私たちはその繋がりを濃密にしていくことで、ユーザーとブランドの関係性をより良く変えていきたいと考えています。

    イベントや展示会のお土産やグッズなども体験型になれば、参加者が感じる付加価値をもう一段高められる

    ——課題などはあるでしょうか。

    小林

    PRや宣伝に用いる場合、通常の施策等とは比較しにくいという課題があります。例えば、1日の視聴者数が1万人のWEB動画と、1日の体験人数が限られているYR LIVEでは、数の上では前者が勝るでしょう。しかし、結果的にユーザーにとって豊かな体験だったか、ブランドにとって有益だったかと問われたときに、説得力のある内容でありたいと思っています。

    ——今後の展望について教えてください。

    小林

    ユーザーの要求は、既製品の中から選択する「価値選択消費」から、自らが創造する“自己実現消費”へと今後もシフトしていくと思います。「サービスに余白を残して、カスタマイズができる」「平均的ではない、パーソナルなモノづくりが実現できる」といった点から、モノづくりの根幹にもより強く関わっていけると考えています。
    アパレルだけではなく音楽やゲームなどエンターテインメント分野での需要も大きいと感じていますし、さまざまなデジタルファブリケーションを組み合わせることで、例えば家具や家電、お菓子や香水、デジタルコンテンツなどについてもパーソナライズが可能になります。
    将来的には「モノ、ベース、イメージをブランドが作って、店舗では在庫を持たず、仕上げはユーザーが行って買う」という流れが実現するかもしれません。世の中の創造と想像のレベルを上げる、という面でも貢献できるサービスでありたいですね。


    IoT化の推進やサステイナビリティへの取り組みなど、社会的な背景や課題に合わせて、モノ作りやサービスのあり方が大きく変化しようとしています。最近では「D to C(自社からユーザーへの直接販売)」という新しいビジネスモデルも形成され、販売や流通の形態にも多様性が求められるようになりました。また、ユーザーの“自己実現消費”への欲求など、新たなニーズやインサイトにも対応していく必要があります。
    “企業とユーザーの共創”を意識したモノ作りやサービス展開は、これからの消費を支え、双方の求める価値を高める新たなソリューションとして、今後これまで以上に存在感を増していきそうです。

    Written by:
    BAE編集部