2021.12.14

さきトレ | Z世代の心を掴んだ、リアルを補完する音声通話SNS「パラレル」

Z世代が求めた「常時接続」という“つながり”

これからの未来を描くであろう、最新トピックスをお届けする「さきトレ」。今回ご紹介するのは、いまZ世代の若者たちに圧倒的な支持を受ける音声通話アプリ「パラレル」。2022年注目の次世代SNSは、なぜ若者の心を掴むことができたのでしょうか。 取材協力:パラレル株式会社

目次

つながりを求めたZ世代が選んだ、次世代SNS「パラレル」

SNSという名を広く知らしめたのは、2004年に誕生した完全招待制コミュニティ「mixi」だと言われています。以来、インターネットを介したコミュニケーションは浸透し、現在ではFacebookやTwitter、Instagram、TikTokなど、誰もがひとつはアカウントを持つ時代になりました。

そのなかで、コロナ禍を機に台頭してきたSNSがあります。それがZ世代の若者たちに圧倒的な支持を受ける音声通話アプリ「パラレル」です。

音声通話アプリ「パラレル」

リアルでもオンラインでもつながることが当たり前になった現代。そこに訪れた新型コロナウイルスによるパンデミックによって、私たちは対面でのコミュニケーションを大幅に制限されました。

誰もが我慢を強いられるなかで、オンラインでつながることが当たり前だったZ世代の若者たちは、オンラインでより深くつながる方法を模索。オンライン上の“たまり場”として、常時接続できる音声通話SNS「パラレル」を活用し始めました。

その背景には、Z世代を中心にオンラインゲームで遊ぶユーザーが増加しているということがあり、ゲーム上で友人同士がコミュニケーションするには、既存SNSのようなテキストチャット(非同期型)ではなく、音声による会話(同期型)の方が使いやすいことが挙げられます。

また、パラレル内でもさまざまなコンテンツ(大富豪、お絵かきしりとり、リバーシなど)を展開したことで、共通のハードやゲームを持っていなくても「友人と一緒に遊べる場」としての認知が広がり、利用も拡大していきました。

結果、同アプリは2019年にリリースされると、1年半で登録者数100万人を突破。月の利用者はこの1年で約830%増加。コロナ禍で月間100時間以上(1日3時間以上)通話しているユーザーが増加するなど、新規ユーザーを一気に増やしながら、同時にコアなファン(ヘビーユーザー)も急増している点に、多くの企業、メディアが注目しています。

「パラレル」の利用状況。Z世代が7割と、圧倒的に若者の利用者が多い

気軽な“たまり場”。リアルを補完するSNS

もともとはゲーマー同士のコミュニケーションを想定していた「パラレル」でしたが、現在では友人間や恋人同士で「同じ時間を共有する」目的で使用されるケースが多く、リアルを補完するSNSとして機能しています。

スマホネイティブのZ世代の若者たちにとって、オフラインとオンラインはつながっており、「物理的に対面で会えないなら、オンラインで会えばいい」という思考が自然と生まれる土壌があったことも、Z世代のインサイトを捉え、ヒットした要因と言えるでしょう。

通話という機能だけに焦点を当てれば、既存SNSのグループ通話にも似ていますが、ユーザーが通話ルームを開いて待っているとそのルームメンバーに通知が届き、「参加したい人は参加する」という仕組みに違いがあります。

さらに特徴的なのは、あくまで“たまり場”のため、「ずっとログイン」しているユーザーもいれば、「ときどきログイン」するユーザーもいる点です。つながりたいときにつながれるアプリであり、ログイン中=通話OKのサインとして、ユーザー同士はお互いの状況を把握しながらコミュニケーションしているようです。特定の目的で集まるのではなく、「これから何をして遊ぼうか」とコンテンツの入り口をその場で決められる点も新しい体験と言えそうです。

「パラレル」の仕組みはシンプル。集まって、通話しながら(つながりながら)、ユーザー同士が同じ時間を共有する

「パラレル」は大前提として、通話品質がよく、またアプリ自体にもミニゲームが搭載されているなど、ユーザー同士がコミュニケーションしやすい仕様になっています。注目すべきは「画面共有」機能です。これにより、一緒にスマートフォンを介して、同じ動画や画像を見ながら、会話が可能です。

「画面共有」機能自体は、オンライン会議システム「Zoom」などにも搭載されていますし、珍しいものではありません。しかし一緒に同じYouTubeの動画を見たり、最近撮った写真を見せあったりなど、まさにリアルでしてきたことが「パラレル」で気軽に代替できたことは、若者に求められた要因のひとつとなりました。

また、AppleやGoogleのアプリストアで同アプリを検索すると、すべてのレビューに対して返信をするカスタマーサポートの手厚さも見逃すことはできません。パラレル社はユーザーの声を非常に大事にしており、現在も積極的にユーザーインタビューを行い、社内で共有。毎週全社会議を行い、アプリ改善への取り組みを継続的に続けています。

同アプリのアプリストアでは、すべてのレビュー、アプリの感想や改善要望に対して、真摯に回答している。こうした誠実な運営体制も「パラレル」が若者から支持され、信頼される理由のひとつとなっている

2021年8月には、タカラトミーと共同で「黒ひげ危機一発」が「パラレル」のミニゲームに加わるなど、その利用頻度の高さに企業も注目し始めています。2022年以降はコンテンツの幅を広げ、カラオケや映画、ライブ配信なども検討されています。

目指すのは、メタバース的な世界観。たとえば、「渋谷集合。そこからみんなで映画館へ」という行動のように、「パラレルに集合」してから様々な空間に遊びに行けるというイメージです。そこには当然、多種多様なコンテンツホルダーとのコラボレーションが不可欠です。

2022年以降、「パラレル」上にさまざまな企業のコンテンツが提供されることで、次世代SNSの価値がますます高まっていく可能性は十分にありそうです。


音声通話SNS「パラレル」のヒットを通して、オンラインとオフラインが融合する「OMO」というマーケティング概念は、Z世代の若者たちの間では、すでに“当たり前”のものになっていることがうかがえます。

リアルとオンラインを使い分けるのではなく、ひとつなぎの場としてコミュニケーションを展開するZ世代の若者たち。彼らが消費の中心となる時代はもう目の前まで迫っています。次世代のヒット商品を生み出すためには、彼らのライフスタイルを知り、インサイトを正しく捉えることが、今後さらに重要になっていきそうです。

Written by:
BAE編集部