映画、本、ブーケなど、続々と登場するサブスクリプション(定額)サービス。そんな中「お菓子の定額サービス」で注目を集めている会社があります。その名もsnaq.me(以下、スナックミー)。健康志向が高まり、カロリーを気にする人が増えている中、お菓子を定額で購入するユーザーはどんな人たちなのでしょうか。サービスをはじめたきっかけや、ターゲット層、パーソナライズされた定額サービスについてスナックミーを運営する、株式会社スナックミー 代表取締役 服部慎太郎さんに伺いました。
スキマ時間で体験できる「精神的なご褒美」
——スナックミーはどのようなニーズを見込んでスタートしたサービスなのでしょうか。
サービスを立ち上げたのは、私自身がお菓子好きだったということもありますが、自分に子どもができたことで、この子にも安心して食べさせられるお菓子が欲しいと思ったことが主なきっかけでした。ですので、当初にユーザーとして見込んでいたのはオーガニックな食材に興味のある方々でした。でも、サービスを続けるうちに、新しいターゲットが見えてきたんです。それは、「精神的なご褒美としてのおやつを求めている人たち」です。プチ贅沢を求める感覚と近いかもしれません。
——「精神的なご褒美」とはどのような人が、いつ求めているのでしょうか。
スナックミーのユーザー層は25歳から34歳までの女性ですが、主な利用シーンは「15時頃に1人で食べる」というもの。これまではお菓子は複数人でワイワイ食べるもの、という印象があったかもしれませんが、スナックミーのユーザーは1人で「自分のリフレッシュのために」食べている人が多い。自宅に届いたら、1パックをカバンに入れて職場へ持っていく。勤務中、おやつの時間になったら、食べてほっとする、リフレッシュする、というイメージです。また、今の20〜30代は、“少しずつ、細かく何回も食事をする人が多い”と言われていることもあり、1日を通して1パック食べる人も多いようです。
——現代人は、多忙な生活の中で何を求めているのでしょうか。
そうですね。健康的なものが食べたいというよりは、月1回にご褒美が欲しいというイメージです。彼女らは、自然食品や健康に対してそこまでストイックなわけではなく、普段はコンビニのお菓子やカフェのスイーツなど、ジャンクなものも食べています。でも、それと並行して「体に良いものを取り入れたい」「ほっとする時間が欲しい」「罪悪感なく食べられるものが欲しい」いうニーズを持っています。
現代人は日々膨大な情報に触れており、選択肢が多く、多忙な時間を過ごしています。ですので、同じ1分でも効率的に質の高い時間にできるよう、その過ごし方を工夫する必要があります。だから、ちょっとした時間に価値を高められるようなサービスが注目されているのだと思います。
突然届けられるというサプライズ感、新しい出会い
——サブスクリプションという仕組みを採用したことによるメリットはあったでしょうか。
ランダムに選ばれた商品が届くという偶然の出会いが、自分で注文しているにも関わらず、プレゼントが届くような楽しさを生み出します。「気づかないうちにポストに入っているから、見つけるとテンションが上がる」という人もいます。
また、商品を選んでくれる=疲れない、というのもポイントになりそうです。
現代人は、とにかく選べるアイテムの数が多く、欲しい商品に出会うのにも一苦労です。少し前は、欲しいものを見つけたら、ネットでスペックを調べて、背景を調べてから買う……というのが定番でしたが、今はインスタで見つけたものを即購入するような時代。細かく商品の良し悪しを検討するより、新しい出会いを求めている人が多いんです。
——味の良さや、健康的であるかといったスペックだけでなく、「新しい出会い」という要素も“精神的なご褒美”となるのはサブスクならではで面白いですね。
お届けする箱の中には毎回冊子を同梱しているのですが、産地の情報や生産者さんにまつわるエピソードなど、商品の背景を紹介するコーナーを設けています。手に届くまでにどんなストーリーがあったのか、どうやって作られているのかを知る、そういった体験もお菓子を食べる時間を豊かにしてくれ、“精神的なご褒美”につながります。
小腹を満たすだけではない、見た目が可愛いお菓子、食べる前から楽しくなるような、時間と空間をプロデュースできるよう、自社完結にしてコントロールしています。
――今後はどのような展開を考えていますか。
お菓子の新しい文化を作りたいと思っています。例えば昔「グラノラ」を食べる文化は日本にありませんでしたが、今や、スーパーでも大きな売り場として展開されていますよね。そんな風に、新しい文化を広げられる商品づくりを目指しています。
場所を選ばずに買える安価なお菓子にも、質や目的が求められています。その背景には、1分という時間でも効率的、有効に使いたいという現代人のライフスタイルが見えてきました。
継続してもらうためのコミニュケーション設計に加え、パーソナライズ化に合わせ、短時間で伝わるより明確なコンセプトやサービス設計が求められるようになるでしょう。
- Written by:
- BAE編集部