2021.10.22

ECで隆盛する「D2C×パーソナライズド」。ユーザーと繋がるカギは“体験の提供”

Spartyに聞くパーソナライズ展開のポイント

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  • https://baestg.dentsutec.co.jp/articles/ceatec/

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  • https://baestg.dentsutec.co.jp/articles/bpo/

  • https://baestg.dentsutec.co.jp/articles/book_and_bed/

  • デジタルを活用してユーザーの嗜好や性質にマッチしたアイテムを提案する、パーソナライズド・マーケティング。ブランドと顧客とが直接繋がるD2Cにおいて、アイテムの価値や顧客体験を向上させる手法として注目されています。
    「D2C×パーソナライズド」の効果的な実現のためのポイントや考え方について、複数のパーソナライズブランドを展開し、パーソナライズブランドの支援サービスも手掛ける、Sparty(スパーティー)の深山さんに伺います。

    目次

    商品や情報の氾濫による“思考停止”を解決するUX

    ——近年、EC等でパーソナライズしたサービスを提供する企業やブランドが増え、2020年のパーソナライズ化粧品市場は119億円に上りました(※)。パーソナライズを活用したビジネスは国内ではどのような足取りを辿ってきたのでしょうか。
    ※ 2020年8月 富士経済調べによる

    私たちがパーソナライズヘアケア「MEDULLA(メデュラ)」をローンチした2018年5月の時点では、「パーソナライズ」や「D2C」というワード自体が国内ではまだほとんど知られていませんでした。
    ローンチ時に記者向けに開催した発表会で多くのメディアに取り上げられ、関心が一気に高まったと感じます。ただ、海外では北米を中心にパーソナライズ商品や広告はすでにトレンドになっていました。

    例えば、米国では肌診断等のビューティーテックを軸とした、ファンデーションやアイシャドウのパーソナライズなどが可能になっていました。自分の求める肌色に合わせてカラーの調整ができ、モールなどで購入するより自由度が高く、ECでショッピングが完結するという点が買われたのだと思います。

    ——パーソナライズを軸としたビジネスに取り組まれた理由を教えてください。

    妻がくせ毛に悩み、たくさんのシャンプーを試しているのを見たことをきっかけに、「パーソナライズされた“自分にぴったりのヘアケア商品”を求めている人は実は多いのでは」と考え始めました。先述の通り、北米ではすでに市場が大きかったため、今後国内にも普及していくと思ったのです。

    加えて、当時考えていたのが「これから思考停止時代のUXが必ず来る」ということでした。現代では、店頭でもECでも商品や情報が氾濫して、検索や選択にコストがかかります。調べるのも手間ですし、何が自分に合うのかの判断するのも難しく、なんとなく買われるケースは多いでしょう。

    私自身、面倒くさがりなタイプでもあるので、簡単な設問に答えるだけで、自分に合ったものが提供される仕組みをつくり、これを解決したいと考えました。世の中的にも、そういったある種の “思考停止” に応えるUXへのニーズが加速するだろうという確信がありました。

    パーソナライズシャンプー「MEDULLA(メデュラ)」は、5万通りの組み合わせの中からユーザーに合わせてカスタマイズしたヘアケアアイテムを届けるサブスク型のサービス。2021年9月時点の累計会員数は40万人以上

    ——パーソナライズには「診断を通じて、既存の商品を薦める」といった仕組みとは異なる強みがあるのでしょうか。

    診断して商品結果を出す手法は、多種多様な既存商品を抱えたブランドなどに多い取り組みですが、多くの場合はレコメンドの一手法に留まっています。2018年当時、「診断をして結果と商品を出して、そのまま購入してもらう」というダイレクトでシームレスな仕組みはほぼありませんでした。

    また、一人一人に合うものを届けるパーソナライズは、SKU(在庫管理上の単位)がブラックボックスのため、商品の横流れが発生しません。
    通常の商品ですと、横流れや割引が起こり、店頭・モール・ECなど様々な場所で購入できてしまいますが、パーソナライズは販路と価格の統制、品質管理を自社でコントロールでき、データの取得も徹底できます。この点が、パーソナライズドD2Cソリューションならではの強みと言えます。

    ユーザーは自分にぴったりのアイテムを入手でき、企業・ブランド側はユーザーから直接得られる多様なデータをサービスの改善に生かせる

    製品づくりに参加してもらい、情緒面でも満足する“体験”に

    ——どんな手法でパーソナライズを叶えていくのかを教えてください。やはり、サイト上での質問によるコミュニケーションがポイントでしょうか。

    「MEDULLA」の場合、現在の質問数は10で、髪の長さ、ダメージレベル、悩みの有無、理想、なりたいテーマ(雰囲気)、ニックネームなどを聞いています。
    最初は30でしたが離脱率が高かったことと、「漠然とした悩みはあるけど、(抜け毛や頭皮のダメージなどの)はっきりした問題や課題はない」「普段はドラッグストアなどで、なんとなく買っている」といったユーザーの傾向に合わせて絞り、シンプルにしています。

    簡単な質問に答えていくだけで、髪質診断結果、スタイリストのコメント、理想の髪を実現するための処方などの結果が表示され、商品の購入に進める

    質問の内容や数は常に微調整しています。しかし、より精緻な診断のために最新のAIや機械学習を投じる、といったことはしていません。 実は、機能化、効率化だけではないエモーショナルな部分はかなり需要です。質問に答えることを通じて、オンライン上でも「購入するときのワクワク感がある」「自分に寄り添ってくれている」という “体験” をいかにつくれるかがポイントになっています。
    ですから、初回の質問だけでなく、商品を届けた後のフィードバックにおいても丁寧なコミュニケーションを行います。

    ——「自分に寄り添ってくれる」と思ってもらえるような体験をつくるという点について、もう少し教えてください。

    例えば、フィードバックについて話すと、使ってみた満足度・不満足度の採点や、フリーアンサーによる感想や希望を記入してもらって変更点を探り、最適なものを提案しています。

    そもそも髪質や頭皮は、ライフスタイルや気候など様々な要因で変化するものですから、シャンプーの処方や機能も必要に応じて変える必要があります。気分によって、香りを変えたいタイミングなどもあるでしょう。
    「あなたにはこれが合っています。一生使い続けてください」ではなく、「今のあなたに合わせて一緒に変えていきましょう」という “寄り添い”を提供する必要があるのです。

    ——「希望や変化を聞く」というのは難しそうですが、質問の振り方などにコツはあるのでしょうか。

    「MEDULLA」のユーザーはF1層が中心で、先述の通り深刻な髪の問題などはない人のほうが多いので、課題解決よりも理想を聞いてあげることが大事だと考えています。なりたい状態や理想の姿を聞いて現状との差分を洗い出し、次回の商品を提案します。

    それに、フィードバックに関しては、初回よりも詳しく質問していますが、ユーザーはモチベーション高く回答してくれます。すでに “自分に合ったシャンプーをつくる” という体験に参加しているのでコミットし続けたくなりますし、誰もが持っている「自分の意見を聞いてほしい」というような承認欲求にも刺さるようです。

    ただ、ユーザーからの回答や意見の判定や分析は、元美容師を始め専門性の高いスタッフが行っています。パーソナライズする商品が家具やスーツ等であれば、求められるサイズやテイストといった課題がはっきりしていて正解がありますが、ヘアケア用品やコスメはユーザーが持つ曖昧な悩みに対してマッチするものを提供するのが難しいためです。

    東京・有楽町マルイや大阪・ルクア イーレでの常設店舗も展開。専門スタッフによる無料髪質診断やカウンセリング、香りのテイスティングといった体験を提供し、ECでの購入をサポートする

    ——パーソナライズされた商品の満足度や、体験価値をより高めるポイントはあるでしょうか。

    「情緒的な価値をいかに提供できるか」という点に注力しています。「あなたを理解して、あなたのためにつくりました」という表現や演出は顧客満足度に繋がります。

    具体的には、一人一人に向けたお名前入りのカウンセリングカードやオラクルカード(占いメッセージカード)を添えたり、箱を開けたときに注文した商品の香りが漂うように、カードに香りを添加したりしています。

    商品によってよりよい生活を送ってもらう、処方や機能に納得してもらう、というだけではなく、情緒的な価値を感じていただき満足してもらう。実は、ここが1一番難しいところですし、面白いところでもあります。

    これまでとは違う仕組みづくりとオペレーションが要

    ——今後はどのような業種で、パーソナライズへの取り組みが進んでいくでしょうか。

    我々がすでに展開しているヘアケア用品、スキンケア用品、ボディメイク等のほか、コスメ、ヘルスケアサービス等とパーソナライズの組み合わせは可能性が高いと考えており、他社との協業も進める予定です。
    例えば、個々のユーザーに寄り添う必要があり、また正解がない保険商品などとの相性もいいと思います。

    Spartyはパーソナライズ処方を行うスキンケアサポートブランド「HOTARU PERSONALIZED(ホタル パーソナライズド)」、パーソナルトダイエットメニューとサプリメントを提供する「Waitless(ウェイトレス)」も展開

    ——パーソナライズブランドを展開したいと考える企業へのアドバイスとメッセージもお願いいたします。

    パーソナライズブランドを展開するには、これまでの製造・流通とは異なるパーソナライズのための仕組みをつくり、オペレーションを徹底することがカギになります。顧客データ等も一本化して、ECからの問い合わせにも、来店時のカウンセリングにも応えられることが理想だと思います。

    EC化が加速し、今後もD2Cブランドは増えていくでしょう。その中で、パーソナライズは大きな差別化の手段になるはずです。私たちも、今後もデジタルとリアルの場を融合させて顧客体験を提供していくとともに、その強みや面白さを発信することで、既存の産業を変革していきたいと思います。

    株式会社Sparty 代表取締役 深山陽介(みやま・ようすけ)さん

    テクノロジーの活用や既存の仕組みの改革によって可能になった「D2C×パーソナライズド」。サプリメントなどの食品も含めて、大企業にも取り組む姿勢が増えており、今後もECの隆盛に伴う伸張が期待されています。
    注文に応じた商材の提供や、廃棄物・大量在庫等の削減に繋がることから、環境面におけるサステナビリティや、エシカルな消費に配慮できるソリューションとして、SDGsの視点からも注目が高まりそうです。
    ビジネスを展開する際は、一度のやりとりで完璧なパーソナライズ商品を届けようとするのではなく、ユーザーからのフィードバックを受けて“商品をつくる体験”を共にしながら、個々によりフィットする商品の提供を目指す、中長期的な視点も要になるでしょう。

    Written by:
    BAE編集部